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- Re: ヴェルデュキア戦記 第一編開始 ( No.8 )
- 日時: 2011/02/27 21:01
- 名前: Ley ◆SAvQ/U.Sqg (ID: BL8fZ.Pl)
第二編 追憶
「フレンダ!」
「うっさい! 名前呼ぶな!」
俺たちは足を全力で動かしながら、どこか隠れる場所にへと走っている。
しかし、一瞬だけ後ろを向いてみると、剣を持って追いかけてくる兵士が沢山見える。
街を騒がし、人を傷つけたフレンダを庇った俺も同罪なのだろう。
しかしそんな事をいちいち脳裏に浮かべる程俺は莫迦じゃない。
ヴァルキュリアの兵士達に捕まれば、フレンダ同様俺も重い刑罰によって苦しむだろう。
今は逃げる事を優先しなければ…
しかしこの女…ロイの言葉からは名前がフレンダという事は分かったが…
大剣を背負って良く俺と同じスピードで走れるな…と感嘆を表したい。
「こっちだ!」
「はいはい分かったわよ!」
俺は早口でそう言うと、フレンダの手を握り曲がり角を通る。
風が異様にも顔にごうごうと当たってきて、今回に限って気持ち悪い。
「……撒いたか?」
曲がり角を走り抜け、一旦休止を図った。
ふぅ…と2人がため息をつく横で、兵士が凄い速さで横を通るのを傍目で見る。
「撒いたようね。」
フレンダは素っ気無く返事をすると、大剣を邪魔物の様に置いた。
「……………」
2人の中に沈黙が走る。
しかし、謎は深まるばかりだ。
貪欲貴族を嫌う理由、大剣を軽々と扱う筋力、そしてロイがフレンダの名を知っていた事…
考えるだけで山ほどある。
「な、なあ… なんでロイって奴はお前の名前を知っていたんだ?」
「…私も元々はヴァルキュリア王国の軍隊に加入してたから、という答えで満足?」
不思議だ。
何故この女が大剣を如何に振るえるかもこの返答で理解できる。
ヴァルキュリア王国での軍隊に加入していた経験があるから、ロイとの面識がある、という事か。
そして軍隊で鍛え上げられ、大剣を振るえる程の力が身に付いた、か。
「まあ、私は軍隊で戦争の経験はもっぱらないし、医療班だったから。」
待てよ? 医療班なのに何故大剣を振るえる?
返答を聞く度に、幾度も幾度も疑問が重なる…
「ヴァルキュリア王国に居住む貴族達に、母親を殺されたのよ。」