ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: オンガク戦争 ( No.10 )
日時: 2011/03/16 20:05
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

泰三が娘の家に訪れたとき、彼は強い衝撃を受けた。
あまりの衝撃に座り込んでしまうほどで、土ぼこりのたまった床に座る。

———何もない。

娘も、娘婿も。
そうなると、奏も…。
ひどい疲労感を覚えた泰三だったが、わずかな希望を持ち、もう一度立ち上がった。

内部を見回すと、小さな少女、奏が倒れていた。
泰三は駆け寄り、抱きかかえる。ふと、我が孫に目を落とす。

怪我はないよう…だが、
指にはピアノ線が絡み付いているようだった。


——まさか。


ファイティストの能力が目覚めたのか。
それは後から科学班と共に調べるとして、と泰三は奏を拾い上げた。

本部に戻る途中の列車の中で奏は目覚めた。

「おじーちゃん?」

目覚めた奏は、あの時の記憶を失っていた。


* * *

「しかし、気になっていたのですが、何故奏様を男装させているのですか?」
と山田さん。

確かに、男装する必要はあまりない様に思える。

「あの日からしばらくして、わしのところに連絡があった」

険しい顔をする泰三は憤りを感じているようにも見える。

「横山からだった。『しばらくしたらお前の孫を引き取りに行きます』ってな」

あの時、横山はまた会おう、と言った。2歳であの能力を発揮した、奏が欲しい、
と思ったようだ。
それに、横山はあの時、奏のピアノ線で腕を失っている。
その償いとして、奏を右手として働かせようと図っているらしい。

「ファイティストとして、奏は十分に素質があるし、戦力にもなる。だが、横山の手に渡ってはいけない存在だ。
ファイティストの前に、わしの大事な孫だからな」

「だから男装を」
と山田さんが続ける。

男に混じって男の制服を着ておけば、横山には気付かれない。

なぜなら、最後に奴が奏に接触したのは奏が2歳のときなのだから。