ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: オンガク戦争 ( No.2 )
日時: 2011/02/27 11:09
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

『緊急事態、発生。緊急事態、発生。直ちに総動員で向かうこと』
赤いランプがくるくると回り建物中の人間が走り回る。
ただ淡々と警報を伝え続ける女性の声もなんだか冷たく感じた。
黒を基調としたシンプルな隊服はただ動きやすさを重視したものであり、
なりふり構わず武器を持った人間が何人も警戒度の高い地点へ向かっていった。

「音楽部隊はまだか!?」
梅の花を象ったバッチを胸に2つ付けたがっちりとした体形の男が大きな声で叫ぶ。彼は、牧野 悠セカンド。防衛部隊に所属している。

…彼の放つ言葉に違和感を感じるのは気のせいだろうか。緊急事態に何故、音楽部隊…。
牧野の頭も少し気になるのだが、まあ良いだろう。

此処の対サウンズ計画特殊音楽隊が警報を鳴らした理由は

——侵入者。

正規の来賓ならば、少しの手続きと身分証明だけで楽々とパスできるのだが、
それをせずに入ってきたということは【敵】ということになる。
ぴん、と張り詰めた空気になる。


…♪
どこからかこの空気に不似合いな音が聞こえる。その音は自然に大きくなってゆき、近づいているようだ。
ザッ
10数名の人間が楽器の変体のようなものを持って並んだ。ヴァイオリン、トランペット…。
他の隊員もごくりと唾を飲む。

「——音楽部隊のお出ましだ」
ニヤと笑う牧野。そこには興奮の色が見えた。

「序曲—オーバーチュア—」
その楽器の変体のようなものを持っている集団の真ん中に立っていた美形だが仏張面の男性が
言う。この美形は水嶋涼太セカンド。若くしてセカンドになった音楽部隊のエリートだ。彼は右側にいた人間に
「奏。これは、お前一人で十分だろう?」
といった。
「当たり前です」
即答の、戦闘服からして男が指の線を動かす。それは恐らく…ピアノ線だ。

ターゲットは侵入者および敵である目の前の男2人。
他の隊員はというと…見物。

赤いランプの警報を伝える女性はプログラムで仕方なく『総動員で』と伝えたが、所詮相手は
二人、しかも素人と来ている。

彼、佐久間 奏フィフスでも十分なほどの相手だ。

「練習曲—エチュード—」
奏が発した言葉を意訳すると“お前達と戦う事など練習にもならない”とまあこんな感じだ。

指を可憐に動かす。その滑らかな動きはいくらフィフスとはいえ同じ部隊でも類を見ない。
リズムに合わせ、ピアノ線は敵を切りつける!
彼らは抗う術もなく、ただ切りつけられている。
乾いた音とも鈍い音とも言える音を出し、周囲の人間には見えない速さでピアノ線を動かしてゆく。

「ゆ…許してくれ!」
片方の男がたまりかねたように哀願した。

奏はちらりと水嶋を見、指示を促す。水嶋は牧野に目配せをした後、
「話を聞きたい、そこらへんにしとけ」
と言った。

奏はピアノ線をしゅるしゅると巻き上げると元の位置に戻った。恐らく奏の立ち居地なのだろう。

「じゃ、処理は防衛部隊で頼む」
と水嶋は牧野に2人の男を引き渡し、音楽部隊全員に向かっていった。

「ご苦労であった!各自持ち場に戻ること!」
見た目からはあまり想像できない、力強い声がよく通っていた。
その声とともに十数名の人間が動き出す。

Re: オンガク戦争 ( No.3 )
日時: 2011/02/27 17:29
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

奏と男二人は廊下を歩いていた。入り組んだこの広い建物ではいくら長い間所属していても迷うので
一人での行動はできるだけ避けるべきなのだ。

「あー俺も戦いたかった…」
頭の後ろに手を組み残念そうに言うこの男。茶色の短髪、背が少し低く、170はないと思われる。
手にはドラムなどをたたくスティックが握られていた。恐らく彼の武器はこれなのだろう。

彼の名前は小形英治サード。奏と同い年だが、この組織に入ったのは奏のほうが早い。
ただ彼がサードだということは、年に1回ある、階級を上げるための昇進試験に2回合格したということになる。

彼はその試験を全て実技の成績のみで通っているのだ。

いわゆる、運動バカである。

「そんなこと言ってはいけませんよ?僕達はただ戦う為に此処に入ったのではないのですから」
仕方ないですね、という風に笑う長身の男。少し長めの髪を耳にかけながら小形と話をしているのは
松岡司サード。クールで敬語口調の彼の手に握られていたのはクラリネット。
これも武器だ。

「ちぇーつまんねぇ」

口を尖らせてみるが、松岡はただ微笑んで見せるだけだ。

「あ、そういえば、あの男二人、サウンズ計画のサポーターだったみたいですよ?」

思い出したように松岡が言う。
「そうなんだ…。大変だよな、この頃サポーターの侵入者がものすごく増えてる」

ここではじめて奏が口を開く。


そう。此処対サウンズ計画特殊音楽部隊、略して対サウ部隊の発足理由は、【サウンズ計画に対抗するため】。

ただそれだけだ。まあ、まず浮かんでくるのは【サウンズ計画とは?】ということなのだが。


サウンズ計画とはこの対サウ部隊ができる1年前に発足した、音楽の研究組織のことだ。

表向きは音楽療法など兎に角音で人を幸せにさせるということをスローガンとして掲げているのだが
裏では世界の破滅のために音を利用しようとしている組織だ。

それに対抗するため、【音楽は音を楽しむと書く】ということを唱えた佐久間泰三コンダクター、
つまり此処のボスが対サウ部隊を作り上げたのだ。

ちなみにここの最高コンダクター、佐久間泰三は奏の祖父に当たる。

「サウンズ計画の活動の幅は凄く広いですからね…」
松岡は持っていた携帯の画面をずい、と二人に見せた。

『横山氏、骨折の患者を音楽で即治癒!—サウンズ計画特集—』

Re: オンガク戦争 ( No.4 )
日時: 2011/02/27 18:12
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

インターネットを通して見られるニュースサイトで書かれていた内容はこうだ。

サウンズ計画の横山氏が骨折したの患者に音楽療法を試み、成功。患者は元気に何の不備もなく生活できるようになった。

とまあ簡単に言うとこんな感じだ。これを見れば、なんだ、サウンズ計画っていい組織じゃん、となる。


しかし。
「これ、完全に治ってないよな?」
口を開くは奏。画面をじっと見つめ患者といわれるその女性の手を指差す。
「ほらここ。サウンズ計画の“モルモット”のマークが付いてないか?」
確かに女性の腕には、【S】と【♭】のマーク。

これは音楽の周波数を微妙に変えて相手をコントロールすることを試みている
サウンズ計画の“モルモット”になったことを示すマークだ。

何人もの被害者を見てきた奏たちには分かる。

「ホントだな。ってことはこの患者…」
「本当に治ってないのに無理やり動かされてることになりますね」

3人の顔はかなり青ざめているようにも見えた。

「ってことは違う足にも負担がもっとかかっていろんなところが骨折していくってことにも
なりかねないよな」
と奏。3人の間に凍った空気が沈黙と共に流れた。
みな、それを想像したようだ。

「じーちゃんに一応報告してくる」
沈黙を破ったのはこれまた奏で、すたすたと廊下を歩き去った。

松岡と小形はキョトンとし、思い出したかのように叫んだ。


「迷うぞ!!?」「迷いますよ!?」
* * *


2人の心配は無用だった。小さいときに此処に来て、何回も遊んでいたのもあり、殆ど迷うようなことはない。

コンコンと握った手で大きな扉をたたく。此処は最高コンダクター室。

「失礼します」

重い扉は古いシーソーのような音を出しながらあいた。
「おじいちゃん、サウンズ計画がまたヤバイことやりだしちゃったみたいだよ?」

急に女口調になる奏。
というよりはさっきの男口調のほうが変だと言ったほうがいいだろう。
奏は正真正銘の


——女。

諸事情があって、男として此処に所属している。彼女が男ではないと知っているのは祖父だけなのだ。
だからここでは女口調で話している、というわけで。

「何をだ?」
威厳を持った、低い声で話す老人こそ、奏の祖父であり、ボスの泰三だ。
奏は先ほどの、松岡のニュースサイトの話をした。

「成る程な、その女性が被害にあっていると」
そう口にした泰三はふむ、とうなってからしばらく書類をぱらぱらとめくり何やら書き込んでいた。

奏はうろうろと部屋の中を歩き回り、祖父の出方をみた。

5分たったか10分たったかは分からない。
しばらくして、ばん、と部屋中に響くような大きな音で机を叩きこう言う。

「直接命令を下す。音楽部隊所属小形サード、松岡サードそして佐久間フィフスにこの女性を救う任務を与える」

「了解しました。即、小形上官、松岡上官に伝えてまいり、準備が整い次第、出発させていただきます」


奏も、自然と仕事用の言葉遣いで話をしていた。

Re: オンガク戦争 ( No.5 )
日時: 2011/03/02 21:04
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

防衛部隊2名。


これが奏たちに付けられた護衛だ。ニュースの情報によると、例の彼女はサウンズ計画が建設し
運営しているサウンズ病院で検査などを受けているという。

現在は自宅での休養となっているのだが、週に2,3回検診のために彼女は病院を訪れる。

そのときを狙ってThe Heartを破壊するのが目的だ。


The Heartとは、サウンズ計画のモルモットにするときに当てる周波数を半永久的に出し続ける機械のことで、
よく効き、コントロールできるようにする周波数は人によって微妙に違う。

対サウ部隊がサウンズ計画に対抗するのに梃子摺(てこず)っているのの理由の1つはこれだ。
1つを破壊しても他に無数とあるThe Heartは動き続けるのだからきりがない。
それに1つを探し、壊している間に他のThe Heartが生み出されるので、さらにきりがないのだ。


「それにしても、こんな記事から任務が与えられるなんてなぁ」
頭に手を回して組み、少し大きな声で話をしているのは小形だ。どうやら頭に手を回して組むのは
彼のクセらしい。

武器もスティックと手軽で、肩に背負っているリュックに余裕で収まっている。

ソレに対して受け答えていた松岡と奏は大荷物に苦戦している。

じりじりと太陽が照りつけ、楽器の様子が気になる松岡は、タオルを楽器ケースにかけた。

「まあ、直接、横山太志とかかわった人物ですし、何か聞けるかもしれませんよ?」

流石というところだろうか。何でもマイペースでポジティブ、のように振舞って気を使ってくれている。

「だな」

奏も一言だけだが松岡に賛同した。


サウンズ病院は本部から3つも街を越えた大都市に設置されている。
そこでは偉い大学の教授なんかも出入りしており、世界規模に有名だとか。

ただ患者が急に異常なほどの回復を見せたりと不可解なことも多々起こることでも有名だ。
逆にその異常な回復を期待してわざわざ遠くから足を運ぶ人もいるそうだが。

本部からは通常ヘリで移動なのだが、運悪く、今日はヘリの修理中だ。
したがって3人と防衛部隊の2名は車でもなく、電車でもなく、徒歩での任務となった。
これがいろいろと大変なことに繋がってしまうわけだが——

Re: オンガク戦争 コメ求む← ( No.6 )
日時: 2011/03/06 15:42
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

「なんでこんなに暑いんだぁぁぁっ!」
ついに小形は叫びだした。

奏も小形を慰める気力を太陽に奪われ、仕方なく
「同感」
と言ってしまう。

誰一人、太陽に会いたくないようで道にも人影はなかった。
アスファルトからは蜃気楼が見えている。


「そういえば、どうして小形君はファイティストになったんですか?」
松岡は気を紛らわせるように話題を探したようだ。

ファイティストとは、戦う演奏者のことを指す言葉で、奏たちのことを言う。
実を言うとファイテストは一部の能力者なのだ。楽器を自分の音楽センスで
変形させ、戦うのだ。

このファイテストになる可能性は0に近い。だから対サウ部隊の音楽部隊は十数名しかいないのだ。

「なんかなぁ…成り行きで。中学生のときに吹奏楽部に入って打楽器やってたんだ」

にこにこと笑い懐かしそうに言う。
「で、ある日突然演奏中にスティックが自分で動き出したってワケ」


そこまで一気にいうと、一拍おいて、
「奏はどうよ?」
と話しかけた。

「え、それだけで終わりですか?」
汗を一滴、地面に落とした松岡はそのあとに、なんて単純な、と付け加えた。

「それだけなんだよ。…で、奏は?」

小形は視線を奏に移した。だが奏は何も言わない。

「かーくん?もしかして覚えてないんでちゅかぁ〜」
馬鹿丸出しの話し方で奏に言う。
奏は上を向いたり首を傾げたりと怪しげな動きを繰り返し、最後に結論が出たのか
口を開く。



「…改めて考えると思い出せない」

まさかの回答に驚いたのか、二人は口をそろえて、
「「ええっ!?」」
と言った。小形が顔をずいずいと子どものように近づけてくる。


「マジかよ?」
それをよけるように後ずさりしながら、奏は答えた。


「ああ。物心付いたころにはもう、両親がいなくて、対サウ部隊のじーちゃんに育てられてて…
そのときにはもうファイティストだった気がするんだ」

それを聞いて今度は松岡が口を開く。
「ご両親はご病気か何かで…?」

両親。それこそファイティストになった理由以上に覚えていない。


「いや、じーちゃんに聞いてるのは事故だ。それ以上は教えてもらえなかったんだけどな」
一同はだまってしまった。


まずいことを聞いてしまったと思ったのか、珍しく空気を読んだ小形が道の先を指差す。


「あ、あそこに人がいる!水貰おうぜ!」


取り敢えず、空気を読んでくれたことはありがたいのだが、人はいない。

人影さえ見えない。


「あの…小形君?暑さで頭がやられたんじゃ…」


「バカ言うな!俺の視力は2.0だっ」

腕組みをし、ぷん、と横を向く。

23歳のいい大人が…とかなんとか思いながらも道を進む。

何もない一本道の先には、小形の言うように人がいた。

Re: オンガク戦争 ( No.7 )
日時: 2011/03/12 21:08
名前: レイビ ◆jopz/fjbXg (ID: kK7tFRHj)

わ〜い!
見に来ちゃいましたですね、はい。
今回も色々楽しませてもらいたいでッス
よろしくお願いします

感想というかなんというか・・・・
今現在私の頭の中で・・・・・
涼太と奏と英治と司が妄想世界を爆走中です!!!(興奮


まぁこれからよろしくです☆

Re: オンガク戦争 ( No.8 )
日時: 2011/03/13 12:52
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

レイビ様、コメ有難う御座います〜w

設定がややこしくて、読むの大変だと思いますが、宜しくお願いしますね^^

Re: オンガク戦争 ( No.9 )
日時: 2011/03/13 14:28
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

—対サウ部隊 最高コンダクター室—

ところは変わって此処、最高コンダクター室。
眼鏡をかけた、いまどき珍しい7:3分けを気にしながら泰三に書類を差し出す男。

泰三に数十年仕えている秘書だ。山田さん。そう奏は呼んでいる。

山田さんは眼鏡を押し上げ少しためらうように言葉を発した。

「横山を…奏様に接触させていいのですか?」

泰三は書類に目を通し、大きな判子を片手に、ため息をついた。

「かまわん。どうせ通らなければならない試練だからな」

2人の会話はよく分からないが、今回の任務は奏にとって危険なものであるらしい。

「あの日——」
背もたれにもたれた泰三は昔のことを思い出す。


* * *


「おとーしゃぁん!おかーしゃぁん!」

叫び、泣きながら人間の形をした“モルモット”に小さな少女が飛びついた。

目の前には元、人間。
そして、体格のいい、男。数年前の横山だ。

「君…これらのコドモなのかな?」

人を【これら】と呼んだ。

「返して」

下を向き、手を握り締めた少女は、低い声でつぶやく。
ぽとりぽとりと涙の雫が落ちる。

「ン?」

「おとーしゃんとおかーしゃんを返して!」


カッと目を開いた少女は、もはや少女ではない。少女の身体を取り巻き、光る、そばにあったピアノ。

指に絡みついた糸はピアノ線。


「あぁああぁあぁぁああぁぁあぁぁぁあ!」

フォルテもピアノも関係なく、早く、速く線を動かす。


狂ったように。狂詩曲—ラプソディー—。


流石の横山でも、子ども、それも2歳の子どもが能力に目覚めるなんて思っていなかったようだ。

あっという間に、横山の右手が——。


「ハハハハ、やるね、君。ただ、少しやんちゃすぎるようだ。寝てな」

The Heartが発動。ただ形が違う。モルモット用ではない。
一時的なものらしく、記憶を失うように作られていた。

それが発動されたとき、少女はバタリと倒れる。そしてスースーと寝息を立てだした。

血がぼとり、ぼとりと落ちる。
だが気にしない横山。

「また、会おう。そのときは俺の部下として雇ってやる」

ハハハハハハとまた笑う。


笑う。



笑う……。

Re: オンガク戦争 ( No.10 )
日時: 2011/03/16 20:05
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

泰三が娘の家に訪れたとき、彼は強い衝撃を受けた。
あまりの衝撃に座り込んでしまうほどで、土ぼこりのたまった床に座る。

———何もない。

娘も、娘婿も。
そうなると、奏も…。
ひどい疲労感を覚えた泰三だったが、わずかな希望を持ち、もう一度立ち上がった。

内部を見回すと、小さな少女、奏が倒れていた。
泰三は駆け寄り、抱きかかえる。ふと、我が孫に目を落とす。

怪我はないよう…だが、
指にはピアノ線が絡み付いているようだった。


——まさか。


ファイティストの能力が目覚めたのか。
それは後から科学班と共に調べるとして、と泰三は奏を拾い上げた。

本部に戻る途中の列車の中で奏は目覚めた。

「おじーちゃん?」

目覚めた奏は、あの時の記憶を失っていた。


* * *

「しかし、気になっていたのですが、何故奏様を男装させているのですか?」
と山田さん。

確かに、男装する必要はあまりない様に思える。

「あの日からしばらくして、わしのところに連絡があった」

険しい顔をする泰三は憤りを感じているようにも見える。

「横山からだった。『しばらくしたらお前の孫を引き取りに行きます』ってな」

あの時、横山はまた会おう、と言った。2歳であの能力を発揮した、奏が欲しい、
と思ったようだ。
それに、横山はあの時、奏のピアノ線で腕を失っている。
その償いとして、奏を右手として働かせようと図っているらしい。

「ファイティストとして、奏は十分に素質があるし、戦力にもなる。だが、横山の手に渡ってはいけない存在だ。
ファイティストの前に、わしの大事な孫だからな」

「だから男装を」
と山田さんが続ける。

男に混じって男の制服を着ておけば、横山には気付かれない。

なぜなら、最後に奴が奏に接触したのは奏が2歳のときなのだから。

Re: オンガク戦争 ( No.11 )
日時: 2011/03/20 11:57
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

歌詞頂きました!
作者はかの有名な遮犬様からです。


タイトル:忘却オンガク

張り詰めたこの鼓動
奥に秘めたこの感情
思い出など、向こう側
希望なんて、忘れた

鳴り響く、心の
泣き叫ぶ、反響音わたし
それぞれが、混ざり合っては解けて
外れてく、音が貫いて

(サビ)
悲しくて、泣きたくて
みんな混ぜて、しまおうか
そしたらね、きっとどれもが
変わると思っていいんじゃないか?


蹴躓く(けつまずく)この思い
消し去ったこの過去
愛情など、一方通行いっつう
我慢なんて、捨て去った

鳴り響く、中の鼓動に
語り来る、反響音わたし
それぞれが、混ざり合っては別れて
消えていく、"わたし"がいて

(サビ)
強がって、戦って
みんな変えて、しまおうか
そしたらね、きっとどれもが
私に味方していいんじゃないか?

みんな私を指差して
嫌な音立てては嘲笑う
そんな、音が嫌いなの
だから、私は反響するの
無くしてしまった、あのオンガクを鳴らすの

(サビ)
訴えて、泣いてみて
それで、何かが変わったら
それってね、きっとどれもが
音色でなくなる気がするの

一人、一人の音色と共に
奏でてみたいの、このオンガク
その日がいつか、来たならば
私は自ら忘却するのでしょう。
過去に奏でてしまった醜いオンガクを

END

遮犬様有難う御座いました!

Re: オンガク戦争 ( No.12 )
日時: 2011/03/20 21:06
名前: 風(元;秋空  ◆jU80AwU6/. (ID: oq/GQDEH)

お久し振りです…風です。
コメ来て良かったじゃん♪

No9は奏の過去かな?
おとーしゃんって呼び方が可愛いですねvv
遮犬様の歌詞とは贅沢な(何を言う…

〜P.S〜
お久し振りと言いましたが今後また暫く来れなくなる可能性が高いです。
もしかしたら数ヶ月単位?仕事とかじゃなくて…私の出身地は福島で原発の近くなので……
まぁ,気にしないで下さい。また会って話せると(カキコできると)良いなって(苦笑

Re: オンガク戦争 ( No.13 )
日時: 2011/03/20 23:13
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

風様ぁっ((涙

大変なときにこんな駄作にコメ下さって…
遮犬様のは、私も贅沢だなぁってww

PS
凄く寂しいですが、待ってます!
私の入っている生徒会でもできる限りの
ことをしようと動いています。
風様ができる限り早くここにこれる様、
頑張ります!

Re: オンガク戦争 ( No.14 )
日時: 2011/03/31 08:16
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

小形意外の4人は目を見合わせた。なんだ、コイツ。目が恐ろしいほどにいい、と。

得意そうにいわゆるドヤ顔をしてみせる小形は走ってゆき、道の上に立っている男性に話しかける。

身振り手振りを付けて話し、またこちらに走ってくる。
本当に賑やかな奴だ、と奏は思った。

「協奏者だった!家にお越しくださいだってよ!」

協奏者、とはサウンズ計画に協力しているサポーターのようなもので、
対サウ部隊に協力している一般人のことだ。

水をくれると説明した男はヘラヘラと笑って、道案内を始める。
右に曲がり、左に曲がり、また左にまがり…

不自然なほど遠くの森まで連れて行かれた。



「此処が僕の家です。ピアノを弾くので、都心部だと騒音とかなんとかでややこしいので…
変ですよね、こんなところに住むなんで」


軽く下を向き、微笑んでみせるとドアを開け、中に入るのを促した。


「いえ、素敵なお宅だと思います」

こちらも微笑む松岡。松岡は人当たりがいいので、任務中に出会う協奏者への対応は殆ど彼にまかせっきりだ。

「ありがとうございます」

男性は部屋の奥へと案内し、5人を座らせた。

「あの…お水、持ってきますね」

そういってかちゃかちゃとコップやらなんやらを取り出した。

チリーン、となんとも夏の風物詩なものが風にゆれ、涼しさを演出しようと頑張っているようだが、
それも無駄なようで、うだうだと暑い空気が流れ込んできている。

「お待たせしました」

一つ一つ、コトリと机にグラスを並べる。氷が入っているせいもあって、コップの表面には水滴が付いていた。

「水ーっ!」
「小形君…お行儀が悪いですよ…」

彼らの言葉に皆が噴き出す。これから戦いの前線にいくとは思えないほどの穏やかな雰囲気が漂う。

ただ小形の様子がおかしかった。

Re: オンガク戦争 参照100超え!有難う御座います! ( No.15 )
日時: 2011/03/31 17:06
名前: 風(元:秋空  ◆jU80AwU6/. (ID: sCAj955N)

生徒会!!?何だか…素敵な響ですね??
ハルヒとか思い浮かべる私(苦笑

有り難い事ですよ♪あっ,俺も遮犬様の造った歌詞を手に入れましたです♪
第六話更新おめでとうデスvv
昨日まで親戚の内に非難していたんだけど一旦戻ってきました…また直ぐ非難することになりそうだけど………

じゃぁ!

Re: オンガク戦争 参照100超え!有難う御座います! ( No.16 )
日時: 2011/04/02 10:40
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

風さん
そうですか?私も響きが好きで入っちゃったんですが、
担当の先生は怖いし…orz

10万ほど経費から落とす予定です。
あとは募金をします。

おお、いいですね^^
遮犬様の歌詞、かっこいいですから。
ありがとうございます。

そうなんですか…
本当に物凄いことになってしまってますよね。
3週間もたっているのに…