ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: オンガク戦争 コメ求む← ( No.6 )
- 日時: 2011/03/06 15:42
- 名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)
「なんでこんなに暑いんだぁぁぁっ!」
ついに小形は叫びだした。
奏も小形を慰める気力を太陽に奪われ、仕方なく
「同感」
と言ってしまう。
誰一人、太陽に会いたくないようで道にも人影はなかった。
アスファルトからは蜃気楼が見えている。
「そういえば、どうして小形君はファイティストになったんですか?」
松岡は気を紛らわせるように話題を探したようだ。
ファイティストとは、戦う演奏者のことを指す言葉で、奏たちのことを言う。
実を言うとファイテストは一部の能力者なのだ。楽器を自分の音楽センスで
変形させ、戦うのだ。
このファイテストになる可能性は0に近い。だから対サウ部隊の音楽部隊は十数名しかいないのだ。
「なんかなぁ…成り行きで。中学生のときに吹奏楽部に入って打楽器やってたんだ」
にこにこと笑い懐かしそうに言う。
「で、ある日突然演奏中にスティックが自分で動き出したってワケ」
そこまで一気にいうと、一拍おいて、
「奏はどうよ?」
と話しかけた。
「え、それだけで終わりですか?」
汗を一滴、地面に落とした松岡はそのあとに、なんて単純な、と付け加えた。
「それだけなんだよ。…で、奏は?」
小形は視線を奏に移した。だが奏は何も言わない。
「かーくん?もしかして覚えてないんでちゅかぁ〜」
馬鹿丸出しの話し方で奏に言う。
奏は上を向いたり首を傾げたりと怪しげな動きを繰り返し、最後に結論が出たのか
口を開く。
「…改めて考えると思い出せない」
まさかの回答に驚いたのか、二人は口をそろえて、
「「ええっ!?」」
と言った。小形が顔をずいずいと子どものように近づけてくる。
「マジかよ?」
それをよけるように後ずさりしながら、奏は答えた。
「ああ。物心付いたころにはもう、両親がいなくて、対サウ部隊のじーちゃんに育てられてて…
そのときにはもうファイティストだった気がするんだ」
それを聞いて今度は松岡が口を開く。
「ご両親はご病気か何かで…?」
両親。それこそファイティストになった理由以上に覚えていない。
「いや、じーちゃんに聞いてるのは事故だ。それ以上は教えてもらえなかったんだけどな」
一同はだまってしまった。
まずいことを聞いてしまったと思ったのか、珍しく空気を読んだ小形が道の先を指差す。
「あ、あそこに人がいる!水貰おうぜ!」
取り敢えず、空気を読んでくれたことはありがたいのだが、人はいない。
人影さえ見えない。
「あの…小形君?暑さで頭がやられたんじゃ…」
「バカ言うな!俺の視力は2.0だっ」
腕組みをし、ぷん、と横を向く。
23歳のいい大人が…とかなんとか思いながらも道を進む。
何もない一本道の先には、小形の言うように人がいた。