ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: オンガク戦争 ( No.9 )
- 日時: 2011/03/13 14:28
- 名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)
—対サウ部隊 最高コンダクター室—
ところは変わって此処、最高コンダクター室。
眼鏡をかけた、いまどき珍しい7:3分けを気にしながら泰三に書類を差し出す男。
泰三に数十年仕えている秘書だ。山田さん。そう奏は呼んでいる。
山田さんは眼鏡を押し上げ少しためらうように言葉を発した。
「横山を…奏様に接触させていいのですか?」
泰三は書類に目を通し、大きな判子を片手に、ため息をついた。
「かまわん。どうせ通らなければならない試練だからな」
2人の会話はよく分からないが、今回の任務は奏にとって危険なものであるらしい。
「あの日——」
背もたれにもたれた泰三は昔のことを思い出す。
* * *
「おとーしゃぁん!おかーしゃぁん!」
叫び、泣きながら人間の形をした“モルモット”に小さな少女が飛びついた。
目の前には元、人間。
そして、体格のいい、男。数年前の横山だ。
「君…これらのコドモなのかな?」
人を【これら】と呼んだ。
「返して」
下を向き、手を握り締めた少女は、低い声でつぶやく。
ぽとりぽとりと涙の雫が落ちる。
「ン?」
「おとーしゃんとおかーしゃんを返して!」
カッと目を開いた少女は、もはや少女ではない。少女の身体を取り巻き、光る、そばにあったピアノ。
指に絡みついた糸はピアノ線。
「あぁああぁあぁぁああぁぁあぁぁぁあ!」
フォルテもピアノも関係なく、早く、速く線を動かす。
狂ったように。狂詩曲—ラプソディー—。
流石の横山でも、子ども、それも2歳の子どもが能力に目覚めるなんて思っていなかったようだ。
あっという間に、横山の右手が——。
「ハハハハ、やるね、君。ただ、少しやんちゃすぎるようだ。寝てな」
The Heartが発動。ただ形が違う。モルモット用ではない。
一時的なものらしく、記憶を失うように作られていた。
それが発動されたとき、少女はバタリと倒れる。そしてスースーと寝息を立てだした。
血がぼとり、ぼとりと落ちる。
だが気にしない横山。
「また、会おう。そのときは俺の部下として雇ってやる」
ハハハハハハとまた笑う。
笑う。
笑う……。