ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 蛻の僕。 ( No.2 )
日時: 2011/03/02 15:22
名前: 藍零 ◆veyMdjA2J6 (ID: k5KQofO8)

1頁目:感情



 しとしとと雨が降る。

 人は雨が寂しく聞こえるというけれど、僕はなんとも思わない。
 
 透明なビニールの傘に、雨粒がたまる。
 ぽつぽつと音が鳴り、雫が落ちた。

 吐いた息が、白くなるのは、人は綺麗と喜ぶけれど。
 僕はなんにも感じない。

 そういうと、隣の君は純粋に笑う。


 ————だってあーちゃんはあーちゃんだもん


 そう笑う。

 僕はふーんと頷くと、雨雲に隠れた空をみつめる。

 雨も、晴れも、雪も、雷も。
 どれも僕には関係なくて。

 晴れはうれしいだとか、雨は哀しいだとか。
 そんな感情僕には無くて。


 だから人はそんな僕を、「欠陥人間」というのかもしれない。

 人間の蛻。

 感情の抜け落ちた人間。

 だけど僕は頷くだけ。
 嫌だなんて思わない。

 うれしいだなんて、思わない。


 だって「欠落人間」だからね。