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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 蛻の僕。 ( No.3 )
- 日時: 2011/03/02 15:47
- 名前: 藍零 ◆veyMdjA2J6 (ID: k5KQofO8)
2頁目:暖かいとか冷たいとか
窓に映る自分を見つめる。
別に意味はないけれど。
「あーちゃんどーしたのー?」
ルーが僕にしだれかかる。
軽いな。
僕と同じ年のはずなんだけど。
「別に何にも」
僕は無表情のまま、窓の向こうを見つめる。
橙色の光がともる家。
人はあれを「暖かい家庭」と呼ぶのだろうか。
「ルー」
僕は、僕の膝の上に乗る友人に声をかける。
彼女は「ん?」と微笑みながらこちらを向く。
「あれが『暖かい家庭』?」
僕がその家を指さして問いかけると、ルーはおかしそうに笑った。
「うん、そうなのかもね」
僕は彼女の曖昧な回答に、そう、とつぶやいた。
彼女はそんな僕の反応がつまらなかったのか、膝の上でごろごろと寝転がり始めた。
痛いんだけど。
「痛いよルー…」
聞こえてないな。
僕はルーを膝の上から退かすことを諦め、一つため息を吐く。
もう一回窓を見つめると、窓には結露が出来ていた。
結露が出来るってことは、きっと外は寒いんだろうね。
僕はふとそんなことを思う。
部屋は暖房をつけているから、すごく暖かい。
快適な部屋。
でも、一言も会話がない。
それがどうとか、僕は思わないけど、人はきっと「冷たい部屋」と呼ぶんだろう。
冷たくても、暖かくても、どうでもいいよ。
部屋は住む場所。
それ以上でもそれ以下でもないし。
きっと僕は、5年以上暮らしているこの部屋が崩れようとも、別な部屋が見つかればいいのだろう。
部屋なんてそんなもの。
住めればいい。
便利なところがいいけどね。
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