ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 蛻の僕。 ( No.5 )
日時: 2011/03/02 21:43
名前: 藍零 ◆veyMdjA2J6 (ID: k5KQofO8)

4頁目:変態っていったらあいつだけ。


 クイナさんが夕飯を作っている間、僕たちは大人しくテレビを見ていた。
 ルーはすごく遊びたそうだったけど、夕飯抜きはキツイからね。
 
 ルーはよく食べる。
 一人で三合くらい食べられるんじゃないかな?
 140cmの細身なのに、どこに入れているんだろう。

「あ、あー。あの事件が起こったのってここの近くじゃないか?」

 ケイがテレビを指さしながら言った。

 確かにここの近くだね。
 僕は少しその事件が気になって、テレビに耳を澄ませる。

『————現場には血が大量に飛び散っていたそうです。被害者は二名確認されていますが、すでに人の形を成していなかったそうです。犯人はいまだ見つかっておらず———』

 バラバラ殺人か。
 ルーはつまらなそうにごろごろと寝転がっていた。
 ケイはまたあいつか、という顔をしている。

 あいつ、だね。

 被害者は、殺されたんじゃない。
 殺し合いをさせられたんだ。

 だから犯人が見つからない。
 だって自分達で殺しあって死んだんだから。
 証拠なんて見つかるはずがないからね。

「ま〜たユウは〜」

 ケイはごろっとリビングに寝転がった。

 僕もみんなと同じ様に寝転がる。
 テレビも床も見えなくなって、天井だけが見える。
 当たり前のことなんだけど、なんだか面白かった。

「…ユウは変態だからね」

 僕は諦めがちに呟いた。
 
 ユウは変態。
 
 人が大好きなんだ。
 殺しあう様が一番好きらしい。
 だからよく人を殺し合わせて遊んでいる。

 何が楽しいんだか。

 僕の周りの人間は物騒な遊びが好きな人が多い。

 ま、それを傍観しているのは楽しいけどね。
 その人の弱点や、強味。
 いろいろなことがわかる。

 戦いとか殺し合いってなると死の瀬戸際だからね。
 余裕が無くなってくると本性が見えてくるんだ。

 いつもは優等生のあいつだって、死と隣合わせになれば凶悪犯に早変わりだ。


 楽しいよ。
 人って無様だ。

 余裕が無くなればあっさりと友を捨てる。
 
 友の為に流す涙だって、偽善以外の何物でもないのに、それを見て喜ぶ様も笑える。

 
 人間って穢れてる。

 まあ、僕もその人間なんだけれど。