ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Aviz—オリキャラ募集— ( No.4 )
日時: 2011/03/03 21:26
名前: B.B (ID: gWH3Y7K0)


青年は舗装された通路から伸びる、その先にある大きなゲートを見渡した。
……災害の直後は東京都をまるごと飲み込んでしまったこの大穴も、今ではこのサイズだ。
そうとは言っても軽く縦に20m、横に15mほどはあるのだが。

近くでは迷彩服を着た自衛官。橙色の作業服を着た作業員。それに都市型迷彩と呼ばれる灰色の戦闘服を身に着けた兵士たちもいる。
恐らく後者は企業によって雇われた傭兵たちであろう。彼らは何と言っても公務員ではないから、フットワークが軽い。
自衛隊が部隊を繰り出そうとする間に、すでに数回は出動できる。

そしてそれらを今、観察しているこの青年——ヤマ・ジュヴァイアルもその企業の尖兵の一人である。
少し彫りが深い顔立ちは東洋系と中東系の人種の面影があり、その黒色の髪は長く、裏で一つに括っている。
見方によっては女性にも見えなくはない姿だ。

彼は静かにかぶりを振った。

「……はぁ、ついにここまで来ちゃったか」

元々、彼は従軍経験も戦闘経験も無い、ただの民間人であった。
楽天的な性格で快楽主義者。いつも楽しいことを求めて行動を起こす。
仲間内からは呆れと好意を持った視線で迎えられ、彼もそれを心地よく思っていた。

しかしあの地震で多くの事が変わる。

親友と呼べる存在であった一人の友人が、医師として調査団に加わり、迷宮に潜っていったのだ。
多少心配はしたが、まさか護衛には軍人もいることだしと幾ばかの楽観を持ってそれを見送ったヤマ。

しかしその予想は外れ、帰ってきたのはボロボロになった調査団員八名。
そのどれもがあの親友の顔ではない。

彼は自らを責め、あの時の決断を悔いた。無理にでも止めさせるべきであったと。


そんな失意の溺れる彼の元へ、ある通知が届く。
それは企業が調査部隊員を募集しているという知らせであった。
ヤマはそれにすぐに飛びついた。もしかしたら彼を見つけ出せるかもしれないという淡い期待を抱いて。

企業の調査団に加わったのは良いものの、その実態はただの傭兵。
軍隊式の短期訓練を三ヶ月ほどみっちり受けたヤマ。

そして彼は今ここにいる。

自らの友も通ったであろうこのゲートの目前に。


「——アーマカム第8調査部隊の方々にご連絡いたします。部隊員の方はすぐにゲート前ロビーのアーマカム社配布所までお急ぎください。繰り返します——」


唐突に響くアナウンス。ヤマは自らの都市型迷彩服を慌てて正すと、ある程度の人がごった返す中を縫う様にして、配布所まで向かった。