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Re: 始末屋『白松ちゃん』【オリキャラ募集一時停止】 ( No.19 )
日時: 2011/03/31 15:19
名前: るりぃ ◆wh4261y8c6 (ID: SHYi7mZj)

「で、もし嬢ちゃんが本当に暇つぶしできたんだったら、今すぐにでも帰んな。でないと、巻き込まれておっ死んじまうぜ。」

白松ちゃんはすっと目を細めて翼をみやる。
彼は先ほどとは打って変わって鋭い雰囲気を纏っていた。
翼はそれでも信じられなかったのか、信じたくなかったのか、くすくすと笑いながら

「もーっ、何言ってんですかー。冗談も程々にしてくださいよー」

と言った。
白松ちゃんはその様子にため息をつく。
と、それと同時にドアが勢い良く開き、大怪我をした一人の男が転がり込んできた。
顔を驚愕と恐怖に歪める翼に白松ちゃんは椅子から立ち上がり、男に近づきながら、だから言っただろうといわんばかりの顔で冷笑した。

「ほら、さっさと帰りな。」

「意地でも帰りません!」

刹那という言葉では表しきれない程早い翼の返答に白松ちゃんは男を助け起こしながら頭を掻いた。
呆れたような困ったような顔を浮かべながら、男が立ったのを確認して椅子に座った。

「で、アンタはなんで此処に転がり込んできたんだい?」

もう翼の存在を無視する事にしたのか白松ちゃんは視線と関心と笑顔を男の方に向けて問いかけた。
男は未だに痛むのか患部に手を当て苦しそうな表情で口を開いた。

「仲裁に入ったらそこのチンピラにナイフで切りつけられたんです。」

「……そうか。」

白松ちゃんは男の瞳の奥が僅かに揺らいだのを見て嘘だと判断したが商売用の笑みを崩さぬまま穏やかな声音でそう答えた。
そんな白松ちゃんに隣にいた翼が耳打ちする。

「あの人、何か隠してますよー。追われてる様な顔してます」

白松ちゃんは翼の耳打ちにそんな事は分かっているから口を出すなといわんばかりの視線を送った。
翼は何かを感じ取ったのか黙ってうつむくとそれ以降喋らなかった。
白松ちゃんはそれを見て顔に僅かに満足の表情を浮かべればまた男に目を向ける。
男は先ほどの言葉が聞こえていたのか鋭い視線を翼に送っていた。
翼は男の視線に気がついていないのかまだうつむいている。
白松ちゃんはその様子を見てため息をつくと商売用の笑みを消してだるそうに口を開いた。

「おいアンタ。この嬢ちゃんの言ったとおり、何か隠してんなら素直にいった方がいいぜ。」

男は白松ちゃんの顔から笑みが消えたのを見てため息をついた。
そして観念したかのような笑みを浮かべた、その刹那。
白刃がひらめいた。

「え?」

————翼の首が宙を舞う。
翼の顔は呆然としたような顔だった。
白松ちゃんは一歩も動かず、無表情でそれを眺めている。

「だからさっさと帰れっつったのによォ……」

白松ちゃんがそう呟くと同時に男が明らかに狼狽した様子で声をあげる。

「コ、コイツはお前の仲間じゃなかったのか?」

翼の慣れ慣れしい態度からそう思ったのだろう男を見て白松ちゃんはにやりと笑みを浮かべた。

「残念だったな。俺とコイツは赤の他人さ。さて、お前には全てはいてもらった後に始末させてもらうよ。」






その後、二人分の、誰に依頼されたわけでもない始末の仕事が白松ちゃんにのしかかったとさ。