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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 引き摺る靴と殺人本 ( No.1 )
- 日時: 2011/03/04 18:20
- 名前: 真由子 ◆NCebuCi9WY (ID: 87ywO7pe)
=プロローグ=
ちょうど5年前の9月10日午後4時38分。
僕、三國遊基の兄、三國遊走は交通事故で死んだ。
当時小学6年生だった僕はまだ「死」の意味を理解しておらず、兄はきっと雀の様に起き上がって戻ってくるだろう、なんて馬鹿げた事を考えていた。
が、高校2年生にもなるとそうはいかない。
兄は死んだのだ。
交通事故で———・・・。
残されたものは、その時兄が履いていた「靴」。
ところどころボロボロに擦り切れていたその靴——・・・スニーカーは、事故現場に二足きちんと揃えられていた。
誰もが不思議に思っただろう。
死人が靴を揃えるか、と。
しかし、今ではその事も忘れられている。
僕意外の全員が。
その靴は家に保管されており、あの事故以来、誰も履いていない。
雨が降る中、僕はただ一人。
憂鬱な気分に存分と浸りながらこれからの行く末を考えている。
こんなどうでもいい事に時間を潰せるのは世界中を探しても僕ぐらいしかいないのだろう。
これから、本当にどうしようか。
就きたい仕事も無ければ、絶対にやりたくない、と言う仕事も無い。
とはいえ、適当に決め、適当に就職してもクビになるか自分からやめるか、このどちらかが落ちだろう。
しかし、案外矢っていけるのかもしれないぞ。
そんな自問自答を頭で繰り広げながら僕は大事な事に気付いた。
「・・・墓参りいくの忘れてた」
これこそ、正真正銘の時間潰し男だ。
しかし、あの「靴」と「本」により、僕の運命は大きく変わる。
この時は、あんな悲劇が起こるなんて夢にも思わなかった。
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