ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 引き摺る靴と殺人本 ( No.4 )
日時: 2011/03/04 23:20
名前: 真由子 ◆NCebuCi9WY (ID: 87ywO7pe)

    「殺人本」

遊基のスニーカーはぬかるんだ地面と泥のせいで台無しになった。
水と泥で重くなったスニーカーを引き摺って遊基は歩く。
ふと、遊基は本屋の前で立ち止まった。
吸い込まれるようにして、本屋の中に入る。
ごく一般の本屋だった。
なんの変哲もない白い床にクリーム色の壁と、ズラッと並べられた本達。
売れない本はいつまでも此処においてあるのかな。
遊基が本棚に当たったせいで、本が雪崩のように落っこちてきた。
「憂鬱から」
「空」
「殺人本」
・・・殺人本?
落っことした本を拾いながら、殺人本の表紙を見た。
「殺人本」という本は他の本と何か違う気がした。
黒の背景に銀色で「殺人本」と書かれており、赤黒い血痕が付いていた。
とんでもない魔力や殺気、それと何か・・・。
そんなものが篭っているのではないか。
決して、僕みたいな人間が手にしてはいけないような、そんな本。
裏表紙を見てみると「この本には全世界の人々の死期・死亡原因・道具を示してある。貴方の死期ももちろん・・・。」と言う胡散臭いキャッチフレーズ。
初版は兄が死んだ日・・・2006年9月10日・・・。
偶然だろうが、何か引っ掛かる。
著者の部分は赤黒い血痕で汚れ見えなくなっていた。
予言か、それともただのインチキか。
これは賭けだ。
どちらに賭けるか。悩みどころだ。
遊基は少し躊躇ったがこの本を買う事にした。
この本が——・・・、この本がもし本物なら兄の事も書かれているはずだ。
そして、未来を僕の手に委ねてみたかったから。