ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 引き摺る靴と殺人本 ( No.5 )
日時: 2011/03/04 23:37
名前: 真由子 ◆NCebuCi9WY (ID: 87ywO7pe)

    「後悔」

「こ・・・この本・・・本当に買うんですか?」
レジの若い女が震えた声で僕に訊いた。
遊基が嫌そうな顔を無意識にしていたためか、この本のタイトルからか、女の顔は泣いているようにも見えなくは無かった。
「ええ・・・そうですが・・・」
財布を開けて待っている遊基は答えた。
女は俯いて
「この本が・・・貴方を不幸にするかもしれませんよ・・・?」
おどおどした口調に多少腹は立ったが、笑顔を無理矢理振りまいて
「僕には・・・やらないといけない事があるんです」
というモンスターと戦わなければならない青年の役になりきった。
もちろん僕はモンスターなんかと戦わない。
「大丈夫です」
と最後に決め台詞を言って、代金の2500円を払った。
とんだ無駄遣いかもしれないが、本物だったら2500円以上の価値が出るだろう。
とにかく僕は、この本に自分の命をかけたい。
僕の命で、他の人を救えるのならば———・・・。