ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 引き摺る靴と殺人本・感想求む!(黙れ ( No.7 )
- 日時: 2011/03/05 19:26
- 名前: 真由子 ◆NCebuCi9WY (ID: 87ywO7pe)
「元カノの死」
相馬は兄の履いていたスニーカーを手に取る。
「そ・・・それは・・・。」
遊基が口篭ると相馬はめんどくさそうに「なんだよ」と答える。
見知らぬ人がこの光景を見たら「不良が気弱男を脅してる」ようにしか見えないだろう。
遊基はまごまごとした口調で
「それは・・・兄ちゃんが履いてた靴なんだ・・・」
と相馬を若干苛つかせながらも語った。
相馬は慌てて靴を手放す。
嫌な音を立てて靴が地面に落っこちる。
「悪い」
相馬は靴をすまなそうに拾う。
「ま、気にすんな!あがってあがって!」
遊基は気を取り直して冷え切った部屋の中に入る。
「あのさ・・・、何でお前ん家来たかわかる?」
突然相馬は真剣に語りだした。
しんみりとした気まずい空気が流れる。
「な、なん」
「愛砂が死んだ」
相馬は遊基の言葉を遮って愛砂の死を告げた。
愛砂は相馬の彼女で、遊基の元カノでもあった。
無邪気で、可愛い今時の高校生。
その愛砂が———・・・死んだ?
「冗談はやめろ!」
遊基は取り乱し、相馬に襲い掛かる。
相馬は遊基の腕を押しのけ話を続ける。
「こ、これが・・・事故現場に・・・」
そう呟くと、なにやら靴らしきものをバックから取り出す。
ピンクの生地に白いラインが入った女物のスニーカー。
愛砂が履いていたもの———・・・。
「これが・・・お前の兄ちゃん・・・遊走さんが死んだときと同じ場所で見つかって・・・。・・・それも、同じ方を向いて同じ時間で・・・。さっき・・・死んだ・・・。」
相馬の声は途切れ途切れになっていた。
そして、たまに荒い息使いも聞こえる。
「さっきって・・・・・・・!お前!喜んでるんじゃないのか・・・?」
遊基は相馬のさっきまでの態度が「愛砂の死」を喜んでいるようにしか見えなかった。
そして、また相馬に襲い掛かる。
「待て!話を最後まで聞け!」
怒鳴りながらも相馬の声は振るえている。
「嘘だよな・・・?冗談だろ?二人で俺の反応を見て楽しんでるんだろ!?そうだろ!出て来い!愛砂!!!!出て来い・・・!愛砂!!あい・・・さ・・・ああああああっ!!」
遊基は完全に取り乱して枕を踏みつけた。
何度も、何度も。
「遺体は・・・向日葵公園の噴水前に・・・」
相馬は泣きながら話す。
「な・・・なんで・・・・・・・。」
「知るか・・・!」
二人とも震えた声で討論を始める。
愛砂の死を二人は未だ信じられなかった。
愛砂・・・・。
遊基は声に出さず、心の中で呟いた。
いくら元カノだとしても、「人が死ぬ」なんてものは辛すぎる。
ましてや相馬は相当な傷を心に負っただろう。
「何で・・・・・・愛砂なんだ・・・。」
相馬は呟く。
愛砂が死ぬなんて・・・。