ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: BRACK・STORYS ( No.1 )
日時: 2011/03/05 18:11
名前: ACT ◆ixwmAarxJ2 (ID: d3Qv8qHc)

【Be Silent】




「そこー、気をつけて!……あっ、もっとゆっくり運んで!」

 満ちては引く。いつもはそんな静かな波の音しか聞こえない浜辺だったが、今日は騒がしい。砂浜の端にある立派な別荘から声は聞こえるようだ。その周りには『ニコニコ引っ越しセンター』と赤い塗色で描かれたトラック複数あり、その中から家具を運び出す若い男が何人かいる。もちろん『ニコニコ』はしていない。それどころか苦虫でも噛んだような表情である。
 家から30くらいの男が出てきた。彼を見た業者の顔が歪んだ。原因は彼にあるらしい。

「僕も忙しいんだ、早く作業してくれ」

 大事なお客様なんだ、と作業員は精神を落ち着かせ、さっきよりも速いペースで作業を進めた。そんな姿を見て、家の持ち主らしき男は安堵した表情を見せる。
 師崎肇もろざきはじめ
 彼の正体は売れっ子の作曲家。まだ34歳だが数々の名曲を世に送り出している。


今回はそんな彼のブラックな物語。