ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: BRACK・STORYS ( No.2 )
日時: 2011/05/12 16:36
名前: ACT ◆ixwmAarxJ2 (ID: 91b.B1tZ)



 作業が終わったころには、月明かりが辺りを照らしていた。
 家の中では肇がネチネチと愚痴をこぼしている。

「ったく……業者が遅いんだよ業者が」
「まあまあ、あんなにたくさんの荷物があったんだから。しょうがないって」

 そんな彼を宥めるのは肇の妻、師崎陽奈もろざきはるなである。
 
「もう、そんなにイライラして……今日は寝なさい。気持ち切り替えて!ほらっ!」

 陽奈にうながされるような形で肇は寝室へ向かった。


 翌日、早速新作作りを始めようと肇は机へ向かった。某有名音楽会社から作曲の依頼が来ており、締め切りがもう一週間しかないのだ。もちろん猶予は一ヶ月もあったが、案が浮かばず、ずるずると引っ張った結果がコレだ。
 さて始めようと、深呼吸をしたその時、ガガガガと言う物凄い音と共に家が揺れる。地震かと、窓から外を覗いてみると、ヘルメットを被っている男たちがたくさんいる。どうやら隣の道路を整備しているようだった。
 肇はちくしょうと、独り言を言うが、それで工事が終わるわけではない。
 改めて机に向かう。
 
「「「ガガガガガガドドドドドドド!!!!」」」

 頭の中の鍵盤がめちゃくちゃになる。

「これじゃ集中できないじゃないかっ!」

 痺れを切らした肇は、思い切ってクレームをつけに行くことにした。
 家を飛び出し、現場につくと工事責任者を呼び出した。

「すみません!こちらの工事が五月蝿くて仕事に集中できないんですけど!」

 周りの音が大きいものだから、自然と声も大きくなる。責任者も同じような声で言った。

「大丈夫だ!もう仕上げだ!じき終わるから!」

 まったくと、肇は心の中でうんざりする。ここ最近曲のアイディアが全く出てこない。少しでも気持ちを変えようと静かなでやすらかな海近くの家を選んだのに、工事なんかやってられたら意味がない。
 彼の言葉を信じ、肇は家に戻っていく。