ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 【短編】お題:桜【アンソロジー】 ( No.19 )
- 日時: 2011/03/17 16:48
- 名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: j553wc0m)
【大好きでした、歪んだ彼女が】
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「さーちゃん」
「何よくーちゃん」
彼女は、笑顔では無いけどとても愛らしい顔で私を指差してそう言った。だから私は、同じ名前の彼女に、違うニックネームを付け、無表情で言ってみた。
「不思議、不思議」
「……何が」
「あれ」
彼女は、嬉しそうに微笑みながら単語で喋る。単語なので話の意味はよく理解できないが、とにかく不思議なのだろう。何かが。
とりあえずその何かを理解する為に彼女に問う。すると、彼女は薄桃色の花のお洋服を着飾っている木を指差した。
ワンピースかTシャツかは定かではない。が、ワンピースであれば足が長すぎる。Tシャツだったら、何コイツ変態な状態だ。
「綺麗。……さーちゃん」
彼女は暫く木を見つめて、私の方に顔を向けて、足に指を刺して言った。さーちゃんってあの木の事か? それともさーちゃんみたいに綺麗って言う意図の事か?
どちらにしろ、とにかく足が痛い。噴水がぷしゅーって足から出てきた。但し透明でキラッキラした水の事ではない。グロテスクで赤黒くて臭いも凄い。
「綺麗」
何故だか彼女の一言にとてつもなく恐怖を覚えた。あの木の事か、それとも、足が血に塗れた私の事か。どっちでも良いが、彼女が怖い。
閑話休題。そんな事より私は今とても視界が歪んでいる。何だ、もう天使さんがお迎えに来たのか。どくどくと足から血が流れる。噴水並みのパワーは最初だけだ。
「さーちゃんは、何が好きで、何が嫌い?」
無邪気な笑顔が何となく見える。だって彼女、笑う時口角があがるから。何となくだけど、満面の笑みをしている様に見える。……恐ろしい子!
何が好きか嫌いかと言われてもねー。貴女が怖くて貴女を尊敬してます。の返事じゃ駄目かな。好きも嫌いも言葉にしてないけど。
仕方ないから、こう答えた。
「『桜』が好きで、『桜』が嫌い」
私は綺麗なものが非常に大嫌い。だから春はあの綺麗な桜にイライラすると言う他人から見たら何とも悲しい光景が見られる。別に彼氏が欲しいとかは思ってないけどね。
そしてそれとは逆に汚いものと言うかどこかぽーんって飛んだのが好き。つまり変な人。彼女は変な人って言うかあれだ、あのー、そう、精神が歪んでいる。
彼女の場合歪み過ぎて愛してる筈の私まで殺されそうなんだけど。ちなみに、私は女。彼女は……性別あるのかなー。とにかく超可愛いけど超歪んでいる彼女が私は超大好きな訳だ、要するに。
さて、そろそろ私の話を終えようと思う。私の人生論も、価値観も、ここで終わる。終えられる。
「大好き、桜」
さよーならー。
(ついでに歪んだ世界も大好きだったりしました)
end.
ゆりじゃないお! だって桜性別ないもん!
もう一人の桜はあるけどさ、へへっ!
シリアスなのかよく分かりませんが楽しかったす。