ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 【短編】お題:指先の冷たさ【アンソロジー】 ( No.8 )
日時: 2011/03/06 14:58
名前: ヴィオラ (ID: 6PSxBKjg)



       『望まれない』


私の親友は・・・私と同じ軍隊で能力も私より凄く強かったです
名前は確か・・・『陽炎』
でも・・・いなくなってしまいました、誰も本当のことなんか言ってはくれなかったけれども
私は親友が『イナクナッテシマッタ』ことがすぐに分かって、涙が止まりませんでした。

私は軍隊でも医療のほうにいることが多くて武器を行使して攻撃をすることはあまりありませんでした
あったといえばあったのですが・・・自分が誰かの足を引っ張っているような感じでした、目の前で何人もの人が・・・この世から消えていくのを見ていた私は医療部の手術室で消えていく人間を何度も見ているので慣れという物を感じていたはずなのです

ちょうど晴れていて空もとてもきれいなときに親友は任務に行こうとしていました
それを私は手を振ることしか出来なくて・・・
最後にした会話はその任務の一日前くらいにしただろうか、私はきれいな空の写真と自分の家族の写真をベッドに置いた親友の隣でテレビを見ていました


「『春風』、私がもしいなくなっても
              『春風』は生きるんだよ。
 みんなを置いて行っちゃうことをしたら、最悪だよ!それは最低だよ」

「・・・え?あ、うん。分かった、でも・・・『陽炎』さんがそんなこと言うとはね^^」

「え?あ、そうだね。確かに私もこんな暗いこと言うとは思わなかった」


二人でそのうち笑いあって、ツッコまれたりとか色々しながら休憩時間ギリギリまでずっと陽炎さんの部屋にいました
そのうち陽炎さんの任務演習時間が近づいてきてから私も医療部の会議があるので部屋から同時に出て行きました
その時のさよならは・・・最期のさよならになるとは思っていなかった。

医療部の『遺体安置室』にひっそりと私によって運ばれた陽炎さんという友達の手にそっと触れてみました

—はじめて、てをつないでくれた人なのに
            その手は・・・指はとても冷たかった

それに私はパッと手を離してから弱弱しく青くなってしまった腕がパンッという音と共に降ろされたのを見ました
冷たい風が吹いています、もうすぐ冬らしいです


「陽炎さん・・・

貴方と笑いあったり、泣きあったり、喧嘩しちゃったり、友達じゃなくなりそうになっちゃったり、貴方にいじわるされちゃってショックになっちゃったり・・・

色々あったのに、その記憶が・・・遠い日の記憶のようになりそうです

約束します、私・・・ちゃんと生きるから。
必ず、この世界を平和な世界にしてあげるから。」

ギュウッとつめたい手を温めるように両手で掴んだ時でした
少しぬくもりのようなものを感じました、じっと私はそこにいました
そして・・・うめき声のようなものが聞こえてから私はハッとしました


「・・・陽炎!陽炎さん!」

「・・・春風・・・約束、だよ・・・私・・・もう会えないかも・・・しれないけど・・・ちゃんと・・・見てるからね」

その言葉と共に陽炎さんの手は冷たくなりました
涙が止まりませんでした、私はまだ一人にならないんだと思って涙があふれ出てきました

その約束を裏切らないように私は今を生きています、部屋に張り付いている陽炎をポンとベランダから放してあげると私はベランダから見える青く・・・お別れのような空を見上げました
たとえ、親友がいなくなったとしても私は・・・後を追って消えてしまうようなことはしないという約束と世界を平和にする約束を果たしたい

いまでも陽炎さんをなくしてしまったときの私のような気持ちになっている人は何人もいるということを知っているから、
冷たい指先を・・・知っている人がたくさんいるから・・・


「・・・ちゃんと、約束・・・守るからね。」


                             終わり