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Re: 僕と柚子姫と時間の壁と、 ( No.3 )
日時: 2011/03/08 21:41
名前: 風之介 ◆8ATHtsZhFQ (ID: 87ywO7pe)

  1:2

「おい、お主、大丈夫か?」
僕は女の声で目を覚ました。
男のような口調だが、声は女。
布団の中から顔をのそのそと出す。
丁度女は後ろを向いていて顔は分からなかった。
日本人とは思えないほどの腰まで伸びた銀髪をてっぺんで一つに束ねている女。
その後姿は浅賀柚子に似ていた。
・・・そういえば、どうして僕は此処にいるのだ?
たしか・・・学校の屋上から何もない地味な場所に落っこちて、そこから気絶でもしたのか。

・・・・・・!
僕は唖然とした。
振り向いた女は浅賀柚子そっくりだったから。
夢?それとも天国?
「残念ながらここは現実だ。夢でも天国でもない。そして私は浅賀柚子と言うおなごでもない。」
女は僕の心を察しているように答えた。
「ふふ、よく気付いたな少年。」
どうやら本当に女は人の心を察する事が出来るようだ。
「あ、あの、僕もう帰るんで道を・・・」
布団から起き上がろうすると背中が割れるように痛んだ。
唸り声を上げると女は
「帰る?何を馬鹿なその体で帰ったら死んでしまうわ」
女は荒々しく答えた。
揺れた銀色の髪が不意にも美しいと思ってしまう。
首を曲げて背中を見た。
上半身裸のその上に包帯が巻かれていた。
そんなに酷い傷なのか?
それにしても此処は何所だ?
病院には思えないし・・・。
和風な部屋には僕と女しかいなかった。
「言っとくが私が心を読み取れるのはその人間が近くにいるときだけだ。それにおぬしも早く体を治した方がよろしい。最近は蛇弾が出る。あ、私の名は草鉈柚子。おぬしは・・・海斗であっておるな?」
海斗は偶然にも浅賀柚子とこの女の名前も柚子という事に内心驚いたが自分の名前に答える事で精一杯だった。
柚子は鋭い目付きで天井を見上げた。
腰の槍を抜き取り、その槍の先を天井に向けた。
「なぁ、魯翔?」
槍はそのまま天井を突き抜けた。
中から「おわっ!」という素っ頓狂な声が聞こえた。
ガラガラと天井が開いて中から同年代位の男が出てきた。
「柚子?そ奴は誰ぞ?恋人ぞか」
多分、いや部屋には柚子の他に僕しかいない。
僕の事を見て魯翔という男は顔を歪ませた。
「お前、来世の人間じゃろ」
「ら、来世?」
よく分からない僕は訊き返すと「やっぱりな」と呟いた。
「・・・お前にとって此処は過去ぞ」
柚子は少し躊躇いながらも僕に言う。
過去?来世?
頭の中のコードが絡まってぐちゃぐちゃになる。
僕は?
・・・・・・?
僕はどうなってるんだ?