ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ワタシとアナタ。 ( No.2 )
- 日時: 2011/03/12 15:11
- 名前: 葵 ◆ufwYWRNgSQ (ID: LR1GMCO/)
1個 “心臓狩り”
「ひとぉつ,ふたぁつ…みーっつ……」
真っ赤な血液が滴る心臓を,少女は数える。
髪は既に返り血で赤く染まり,彼女の怪しさを更に倍増させる。
最後の心臓を数えてから,少女はピタリと動きを止めた。
「まだ足りない…まだまだ足りない…もっと,もっと集めなきゃ___」
心臓を片手に乗せ,少女は天高く空に上げる。
近くには,胸を包丁で切り開かれた女性が,見るも無残な姿で転がっていた。
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「雛菊!」
そう声がして,私は振り返る。
………自己紹介が遅れていた。
私は蒼然 雛菊(そうぜん ひなぎく)。
年齢は14歳。
…もう直ぐ,15歳になる。
因みに彼女は私の親友,葛西 愛美(かさい あいみ)。
随分と長い付き合いになるのだが,彼女とは,一線を越えない関係を張り通している。
「…愛美,おはよう」
「おはよう,雛菊。そう言えば,話聞いた? 此処らで起こってる,不可解な事件!」
目をキラキラと輝かせ,愛美は言う。
彼女は人一倍ミステリーなどに興味を持ち,未確認飛行物体等が大好きだ。
無論他の人に知られると困ると言う為,他人には言っていない。
彼女は…愛美は,どうやら私と同じ様に,他人と壁を作って生きている人間の内の一人の様だ。
「怖いよね…。なんか夜中に女の子が一人でいるから話し掛けたら,大事な物を奪われるんだって! クラスの子が言ってた!」
「大事な物?」
「うん。大事な物…つまりね,人間の“心臓”だよ。心臓が無くなると,誰だって死んじゃうでしょ? だから,大事な物って言われてるらしいの」
ふわり,と愛美の髪が風で揺れた。
心臓を集める“何者か”の仕業なのだろうが,私には余り関係の無い話だ。
そんな事に関わりたくも無いし,何より私は一般人だ。
皆と多少価値観の違いはあるが………。
「…ふぅん…」
「ふぅんって…。いつ私達もそいつに会うか分からないのに,雛菊は余裕だね」
「私達が会うとは限らない。けど,愛美は死なないで。泣く事は出来ないけれど,悲しいから」
無表情で言うと,愛美は苦笑いを溢した。
私は,泣く事が出来ない。
感情はある。
しかし,涙は出ない。
悲しいと感じても,泣く事は無い。
「兎に角,夜中に出歩かないでね,雛菊。私が唯一,心を開ける親友なんだから!」
「…お互い様」
唯一の親友,という言葉が胸に響いて,少し表情が綻んだ。
「笑った…!? 雛菊,今笑ったよね!?」
「…分からない」
「もう一回笑ってよー! 可愛かったー!」
愛美,貴女だけは失いたくない。
私の………たった一人の親友。
私の命に代えても,貴女だけは守るから。
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・蒼然 雛菊 ♀
・葛西 愛美 ♀
・深夜 秀一 ♂
・憂 ♀
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