ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ワタシとアナタ。 ( No.7 )
- 日時: 2011/03/09 19:20
- 名前: 葵 ◆ufwYWRNgSQ (ID: LR1GMCO/)
何故私は,信じると一言言えなかったのだろう。
警察からの事情聴取などが終わり,私はパトカーで家に帰る事になった。
勿論,運転手は先程の警官だった。
他の警官は全て事件の事について聞き込みに行っており,皆いないらしい。
「また俺で,すいませんね…」
「貴方,落ちこぼれなんですか?」
「お,落ちこぼれって…。しかし,そうじゃ無いとは否定は出来ません…」
ズーンと効果音が付きそうな位,深夜さんは落ち込む。
車はちゃんと運転してるし,まぁ良いか。
深夜さんを見ていると,少しだけ愛美を忘れる事が出来る気がする。
……にしても,先程深夜さんが言っていた意味が,よく分からない。
何故いきなりそんな事を…?
まさか深夜さんは,此の“心臓狩り”の犯人を知っている…?
幽霊だと言う事も…全て理解している…?
「深夜さん」
「ん? 何ですか?」
「貴方は………“心臓狩り”の正体を知っているんですか?」
深夜さんは黙り込む。
嗚呼,もう直ぐに家に着いてしまう。
深夜さんが確実に何かを知っているのは,分かっているのに。
愛美の仇を取る為には,知る必要がある。
万が一深夜さんが私の味方をしてくれたら,私は愛美の仇を取れる。
深夜さんは仮にも警察だし,情報も色々と得る事が出来るだろう。
「知りません。しかし,人間でない者が犯人だと言う事は,分かっています」
「貴方も…見える人なの?」
「…はい。うっすらとだけですが。警察は職業上そういう非科学的な物を認めてはいけないのですが…」
仕方ありませんよね,と深夜さんは呟く。
家は目の前。
非科学的な物,と言われれば,確かにそうかも知れない。
科学で何とか解明出来る様な話では無いから。
皆,多分初めはそうだろう。
見たという現実から目を背けている奴等も,いるかも知れない。
認めるか認めないかは,本人次第でどうにだってなる。
「…雛菊さん,でしたっけ?」
「はい」
「貴女は………友達を殺した“心臓狩り”に,復讐したいとは思いませんか? 憎いとは思いませんか?」
憎い。
憎いよ。
とても憎い。
愛美を殺した“心臓狩り”が,とても憎い。
___復讐?
果たして其の行為をして,愛美は喜んでくれるのだろうか?
きっと死ぬ寸前は,恐ろしかっただろう。
“死”を見つめ直す直前は,生きていて最も怖い時間の内に入るとも言われている。
愛美,貴女は……復讐という哀れな行為を犯す私を,醜いと思う?
私は深夜さんの問い掛けに,静かに頷いた。
深夜さんは悲痛そうな笑みを浮かばせ,車を止める。
「貴女が“心臓狩り”に復讐をすると言うのなら,俺はどれだけでも協力しましょう。もう,人は殺されるべきじゃない…」
どうでも良いと,思っていた。
私以外の人間全員,関係無いのだと思っていた。
私だけが悲しい訳じゃない。
“心臓狩り”によって命を失った奴等の親族全員,悲しいんだ。
踏ん切りがつかなかった私の心に,遂に踏ん切りがついた。
「深夜さん,私…“心臓狩り”の犯人を倒したい」
そう私が言うと,深夜さんは嬉しそうに笑った。