ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: エスケープ Episode1-4更新 ( No.5 )
- 日時: 2011/03/14 17:32
- 名前: 氷川 (ID: BZFXj35Y)
━ Episode1-4 ━
「昼は動かず、闇夜に紛れて姿を隠せ。」が、逃走の極意。
しかし、高校2年生と中学2年生の兄弟がそんなこと知るわけもないし、考えている暇もない。
そんな素人な逃走犯は、大抵‘公共の場’か‘路地裏’で捕まるのがオチだ。
人並み以上の運を持っていない限り、逃走犯の最期は、すでに我々の脳裏に浮かび上がっている。
東京 世田谷
明良と歩夢は荒げた息を整えながら、都市高速3号線渋谷線の下を沿って歩いていた。
あれから警察も追ってこず、2人は顔を合して笑いながら安堵の息を漏らす。
「兄ちゃん、さっきのカッコよかったよ。」
「え?」
「交差点に突っ込んだの。映画見たいで、めちゃくちゃ面白かった!!」
歩夢の無邪気な笑顔と言葉に、明良は何も言えず、ただ照れてしまった。
しかし、そんなお気楽にしてる場合ではなかった。
「さてと……これからどうしょうか………逃げる場所か隠れる場所に最適な所を探さないと………」
明良は辺りを見渡すが、ホイホイと都合よく転がっている代物ではない。
午後3時過ぎの平和の大都市は、相変わらず人も多いし、車道も忙しく車が行き交っている。
2人が並んで歩いていると、突然歩夢が走りだして、2メートル先に立っている電柱の前で止まった。
「兄ちゃん!!ここは!!!」
歩夢は電柱に貼ってあるカラフルな広告に指を指して言った。
明良は小走りで駆け寄り、5人の高校生ぐらいの女の子が写っている広告を見る。
現在、学生や若者の間で流行っているアイドルグループ“サンシャイン”の広告だった。
どうやら、世田谷の先にある代々木第1体育館でコンサートがあるらしい。
「………ここに行ってみるか。人の多い所の方が、警察にも見つかりにくいだろう。」
「やったぁぁ!!!」
「おいおい…別に見物とかしねぇよ。てか、チケットとかないし。」
歩夢は一瞬だけ喜んだが、すぐに自分たちの状況を思い出してテンションがダウンした。
歩夢も、このアイドルのファンである。明良はアイドル等には興味はないが。
明良は広告の下に書いてある体育館の住所を見ると、その方向に向けて、歩夢と共に歩き始めた。
* * * * *
渋谷区 国立代々木競技場
広い敷地に建つ第1体育館と第2第体育館の周りには、すでにアイドル目当ての観客で溢れていた。
第1体育館の脇にある駐車場は、コンサート開始3時間前にも関わらず、すでに満車である。
関係者専用の裏口から、1台のバスが体育館の裏口付近に停車した。
「おーい、着いたぞ。全員降りる準備しろー!!」
マネージャーと思わる男性は、バスを降りながら大声で言った。
すると、大量の荷物を抱えながらドタバタと5人の女の子が降りてきた。
「裏口入って右曲がった廊下沿いに、部屋が用意されてあるから、ダンスの確認とかしとけよ。」
「「「「「はーい♪」」」」」
女の子5人は声をそろえて言うと、和気藹々と話しながら体育館の中へと入って行った。
「ねぇねぇ、今日のコンサートさぁ、サプライズゲスト来るんでしょ?」
「マジで?私、聞いてないよ。」
先頭を歩いていたボーイッシュな容姿が売りの星間涼香は、並んで歩く笑い担当の品宮遥に言った。
遥は首を傾げながら、後ろで話している他の3人に聞く。
「ねぇ、今日ゲスト来るとか聞いた?」
「ん?私は聞いてないよ。」
「わったしも聞いてないよーん!!」
「………わ、私も…………」
3人の中で一番冷静にいる清楚キャラで有名な一之瀬夕は、首を横に振りながら言う。
3人の真ん中で、やたらとテンションが高い伊部美結も夕と同じく、首を横に振った。
最後に、サンシャインで新規メンバーである中村奈々は言葉だけで、動作は見せなかった。
「涼香、それ誰に聞いたの?」
「いやさぁ、昨日の収録の時間中に、ADの人が携帯越しで話しているの盗み聞きしちゃってさぁ!!」
「そのADって、この前のレギュラー番組で新しく入ってきた人?」
美結が聞くと、涼香は親指を立ててグットポーズを見せた。
「あの人、カッコいいよね〜ぇ………なんか、運動神経も抜群で東大を卒業した人でしょ?」
涼香の言葉に、奈々以外のメンバーが目を丸くして驚いた。
「マジで!?凄いじゃん!!」
涼香は、‘サンシャイン様’と書かれた表札のドアを開け、5人は荷物を床に投げ置いた。
「くっはーぁぁ!!疲れたわぁぁぁ!!!!」
遥と涼香は、部屋にある御座敷に寝転がり、元々置いてあるテレビの電源を入れた。
すると、それを見ていた夕はため息をつきながら2人を見る。
「ちょっと、打ち合せてとダンスの練習するよ。テレビ見てる暇なんかないよ。」
夕が言うと、遥と涼香は表情を曇らせて渋々立ち上がる。
「コンサートホール行くよ。」
夕の言葉と共に4人は立ち上がると、そのままコンサートホールへと向かった。