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Re: 意味がわかると怖い話『短編集』 ( No.132 )
日時: 2011/03/24 21:15
名前: 銀弧 (ID: PDUPGN/L)

二十五

バイトで新聞配達をしている俺は朝早くに起きて静かな町を自転車で走るのが趣味だった。

担当地域はマンションが立ち並ぶ住宅街。
準備を終えて俺は今日配る分の新聞を自転車のかごに詰め込んで出発する

自転車でのんびり走ること数十分、ようやく担当地域が見えて来た。

さつそく目的の建物の一つの前に自転車を止めて階段を駆け上がり、一つ一つ丁寧に折られた新聞を郵便受けの中に入れていく。
半分くらいの階までいったところで休息に壁にもたれかかると向かいのマンションの多くの部屋の窓が赤く染まっているのが見えた。
驚いて数歩近づいてみてみると、どうやらそれは文字になっているらしい。
あれは多分昔に流行った一室一室の電気で文字を作るというものだろう
今回のこれは赤いカーテンなのだろうか。

配達ついでに見てやろうと急いで残りのものを配ってから最上階へと向かう。
上からなのでよくわからなかったのだがそこには確かに

『愛』

と書かれていた。
さては彼女に愛を囁くためにこの字を書いたなと一人納得するが一つ気になった事があった。

なぜマンションなのか

普通に、レストランなりホテルなりで向かいのビルを使えばいいのになぜマンションか。

まぁ、俺には関係ないか。
こんなものを作る時点で俺の想像を遥かに超えているのにそんなの分かるわけないし。
目の前のものから目を離した俺は欠伸を一つ漏らした。




バイトがおわり、家に帰ってテレビをつけるとニュースが流れていた。
最近、俺の担当地域で大量殺人が起きたらしい。
テレビに映し出された犯人はやつれた顔の男性だった。
今回の事件を起こした理由は同じマンションに暮らしていた住民による虐めによって唯一の娘が自殺したことによる復讐だと述べていた。
ニュースが終わる数分前に流れた情報の娘の名前は

『愛』

だった。