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Re: 分かると怖い話『意味がわかると怖い話』イベント開催! ( No.352 )
日時: 2011/04/16 14:31
名前: 神楽 妖 (ID: 7c/Vukd1)

遅くなってすみません……!


『おままごと』

部活からの帰り道。
俺が公園の近くを通ると、小さな女の子がおままごとをしていた。
広げられたレジャーシートの上にはおもちゃのコップとお皿。その上にこんもりと盛られた花や葉っぱ。

かわいらしい光景に、俺は足を止める。
すると、女の子はふと顔を上げ、こちらへむかって走ってきた。
「おにーちゃん!あっそぼ!」
子供好きの俺は少しだけ付き合ってやるつもりで「いいよ。」と返事をした。

「ところで君さ、名前は?」
俺が聞くと、女の子は地面に字を書き出す。

        —— 育人 ——

いく…と?男の子みたいな名前……。ま、このごろの名前はいろいろあるからな。
1人で納得した俺を、女の子は見上げて、「はい、おにーちゃん!ご飯だよ!」と言う。
見ると、手で何かを差し出すようにしている。

しかし、差し出された少女の手のひらには何もない。
——せめて葉っぱのおかずとかあるだろ。
俺は苦笑しながら、女の子から何かをもらうふりをして口に運ぶ。
が、俺の行動に女の子は不思議そうに首をかしげ、「いらないの?じゃあ私がもらうね。」と言った。
そして後ろを向き、何かを食べるふりをしている。
——まったく、どうすりゃいいって言うんだ?

子供が好きだからって部活で疲れてるんだ。これ以上相手をするのもめんどくさいな……
「もう帰らなきゃいけないから。じゃあ。」俺はそう言って、返事も待たずに歩きだした。
「ちょっと待って!まだお兄ちゃんからご飯もらってないよ!」
後ろでそう言った女の子の声を無視して。