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Re: 天色の蝴蝶 2話UP ( No.8 )
日時: 2011/03/23 15:50
名前: 出がけのコーヒー (ID: BZFXj35Y)

【2】



 学校の屋上に突如現れた謎の他校の女子高生



           月谷恋奈─────




恋奈の両手に浮かぶ、無数の酸の球。
恋奈は不気味に微笑むと、酸の球を次々と蝶也めがけて飛ばし始めた。


「うおっ!!あ、危ねぇ!!」


蝶也は足に力を込め、目にも見えないスピードで避けながら、恋奈の元へ向かう。
「一筋縄ではいかないわね………でも、これならどう?」
蝶也が恋奈の目の前に現れた瞬間、恋奈は後ろに下がって、金網の上に立つ。




「私の十八番、“硫酸時雨”。喰らっちゃえ!!!」




恋奈は両手からバスケットボールサイズの硫酸の球を創りだし、上空へと投げ飛ばした。
「マジかよ!!!屋上壊す気か!!!」
「私の学校じゃないし。ま、防ぐことも避けることもできないでしょ?」




  バシュン!!!




恋奈が笑った瞬間、硫酸の球は割れ、硫酸の雨が屋上めがけて降ってくる。
蝶也は辺りを見渡すが、硫酸の雨を凌げそうな場所はない。
凌げたとしても、屋上が破壊されてしまう。
「………くそっ!!」
蝶也は恋奈を睨みつけると、学校と屋上を繋ぐドアへと向かう。


「ばいば〜い♪屋上の弁償代、生徒会の予算会議で話しときな〜♪」


恋奈は手をプラプラと振ると、そのまま屋上から飛び降りて行った。
「なんで生徒会に入ってること知ってんだよ。」
蝶也はドアを蹴り開け、そのまま階段を一気に駆け下り、屋上から大急ぎで離れた。



   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



「やりすぎちゃったかな〜♪ま、いっか〜♪」



恋奈は、すでに天明館高校沿いを歩いていた。
歩きながら硫酸で溶けた屋上を見物していると、次第に校舎内が大騒ぎになっていることが分かる。



    「おやおや、命令では試すだけではなかったか?」



恋奈が校舎を見物していると、目の前にはスーツ姿の若い男性が現れた。
眼鏡をかけ、茶髪の混じった黒髪をオールバックで整え、傍から見ればエリート会社員の様である。
「ん?なによ、あんたは黙って見ときゃいいのよ。」
「おいおい。俺は天明館の職員だぞ。しかも、‘彼’の担任だ。」
天明館高校の職員である祇堂ヒスイは、眼鏡を掛け直しながら恋奈に言う。



      「あんたはただの監視役でしょ。なめんなよ?」




    「新人の分際で調子に乗り過ぎなんだよ。」



2人は少しの間睨みあうが、祇堂が鼻で笑って恋奈を通り過ぎる。
「せいぜい頑張るといい。俺の生徒は強いぞ。」
「殺してやるわよ。私の酸で、跡形もなく溶かしあげる。」


恋奈は祇堂を横目で見ると、そのまま歩き去った。