ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 天色の蝴蝶 3話UP  コメ願 ( No.9 )
日時: 2011/03/24 21:46
名前: 出がけのコーヒー (ID: BZFXj35Y)

【3】


天明館高校の屋上の一部は、発煙して溶けており、5階の教室が露になっていた。


蝶也は大急ぎで屋上から離れ、階段を下って1階にある生徒会室に向かっていた。
が、2階に着いた所で担任の祇堂ヒスイが、蝶也を呼び止めた。


「おい、天本。どうした?」

「え、いや……な、なにもないですけど?」

「5階の屋上が溶けているらしいな。何か知っているのか?」


祇堂の言葉に、蝶也は何も言えず黙り込んでしまう。
蝶也が黙り込んでいると、祇堂は首を傾げて蝶也の顔を覗きむ。
「お前がやったのか?ん?なんで黙りこむ?なんで否定しない?」
祇堂はジワジワと口頭で、蝶也を精神的に追い詰める。
ここで逃げれば、確実に犯人扱いになると思った蝶也は、必死に頭を回転させて、言い訳を探す。

             「あれ……先生………」

蝶也の脳に、ふと疑問が思い浮かぶ。
「なんだ?」



「どうして、先生は屋上が崩壊でなく、溶けているって知っているのですか?」



蝶也の質問に、祇堂は特に驚かず、何故か笑みを浮かべた。
「…超能力のことは、誰に言わない方が身のためだぞ。無論、君の周りにいる人たちにもね。」

「!?」

祇堂は低い声で言う。
蝶也は一旦後ろに下がると、3階にある自身の教室に向かった。

      なぜ、超能力がバレタ─────



   祇堂先生は何者だ─────   さっきの女子高生は何者だ─────

脳裏を駆け廻る疑問に、一々向かい合っている暇はなかった。
教室に入り、自分の荷物を鞄に詰め込むと、大急ぎで下駄箱へと向かう。
階段には、もう祇堂の姿はない。
蝶也は1階まで一気に駆け下りると、下駄箱で靴を履き替え、校舎から飛び出した。


その瞬間に、異変に気付いた。








    「逃げることは、不可能だよ。」








グラウンドの中央に、祇堂が立っていた。
祇堂と目が合った蝶也は、体に悪寒が走るのを感じた。

「俺と君は‘同類’かつ‘同志’だ。そして、今それを証明する。」

祇堂は右手を空へと上げる。
すると、天明館高校を囲むように、謎の‘膜’の様な物が現れた。
膜は不気味な紫色で、先程まで聞こえていた学校外からの車の騒音、飛行機の騒音が聞こえなくなった。


「俺の能力は否定(ディナィアル)。簡単に説明すれば、バリアだ。」


祇堂は再び蝶也と目を合わせると、不気味な笑みを浮かべた。
「ちょっとしたゲームをしないか?」
「は?ゲーム?」
祇堂の思わぬ言葉に動揺する蝶也。
しかし、そんな蝶也を無視して祇堂は説明を始めた。

「君が勝てば、天明館高校の人間を返そう。だが、負けたら……」



       「君を頂こう。」



蝶也は後者の意味が分からなかった。

───君を頂くこう───

蝶也の脳裏に、この言葉が何度もこだました。