ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: — ア リ ス — ( No.2 )
- 日時: 2011/03/19 16:58
- 名前: 憬ネ (ID: 3ZeOyjRh)
+1+
「お父様。今日は戻ってきてくれたのですね!!」
「おお、亜璃抄。いつも元気が良くていいな。」
私は大好きな父に抱きついた。頭を優しくなでられ私はもっと嬉しくなった。
その時階段を優雅に下りるヒールの音がした。
「まぁ!!申し訳ございません…亜璃抄っ何をしているの。早く離れなさい。」
そう言うと、誰かが私の腕をつかんだ。
「お母様…」
「全く。お父様はお疲れになっているのよ??」
母は私を父から引き離して父にほほ笑んだ。
「後できつく叱っておきますわ。」
「〜〜〜…」
そんな母の手はいつも温かかった。
「亜璃抄!!なんで私の言うことを聞かないのですか!!」
「だって…久しぶりにお父様が帰ってきたから…」
私は涙を流してぐずりながら言い返した。
大きなため息をついた母は私の頬を叩いた。
「痛いっ!!」
「あなたが悪いのよ亜璃抄。これからはあなたが言う事を聞かなければこうすることになります。いいですね。」
叩かれた頬は涙が滲んでさらにヒリヒリした。
「…ハイ…」
「後、此処にいるあいだは私語を慎む事。もう夜よ。早く自分の部屋に戻って寝なさい。おやすみ亜璃抄」
バタン…
いつもこうだ。
お母様は私の事が嫌いなのかな———・・・
いつもは私には関わらない母でも、父の事になると厳しく顔を突っ込む。
そんな私はお母様の事が好きなの??
もう自分がわからないよ—————・・・
零れる涙を寝巻の袖で拭いた。
「亜璃抄。」
バッ
私は勢いよく起き上がった。
時計を見るともう針は一番上まできている。
あれから私は20秒間に一回くらい涙を拭いて、全然眠れていなかった。
「お…お父様…??なぜ此処に…」
「さっきあんなこと言われてたから。眠れないだろうと思って。」
「うん…来てくれてありがとう。」
私はさっきの事を忘れるように小さく笑いかけた。
「ねぇ…お母様は、私の事が嫌いなの??」
父は「そんなことない」と言うように首を横に振った。
「その逆だよ。お母様は亜璃抄の事が大好きだよ。」
その答えは知っていた。
使用人に聞いても執事に聞いても誰に聞いても答えはこうだから。
「じゃあ、お父様は私の事が好き??」
「うん。もう寝なさい。おやすみ亜璃抄。」
父は返事をしてドアを閉めた。
—end—