ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: —  ア  リ  ス  — ( No.3 )
日時: 2011/03/19 18:05
名前: 憬ネ (ID: 3ZeOyjRh)

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ガタンゴトン……ガタンゴトン…

揺れる馬車の窓におでこをぶつけ、今まで自分が寝ていたことに初めて気づいた。

また見た…あの日の———…

「亜璃抄!!何時まで座っているの!!今日はあなたの婚約パーティですよ!!」

お母様は甲高い声で私に言った。

「はいはい…」

「よいしょっと…」

馬車から下りた時クラッカーの音が響き渡った。

「・・・な・・・」

「結婚おめでとうございますっお嬢様!!」
「今日は夜までお祝いです!!」
「イぇーーーい!!」

結婚??まだ早いって…

婚約はお母様が勝手に進めたんじゃない…

しばらくどんちゃん騒ぎがつづいて体力も無くなってしまった。
騒ぐ親戚を押しのけテラスに出た。

「ふぅ…もう…でも、お父様、まだ来ないわねえ

メイドが持ってきたジュースを一口飲んで溜息をついていた時、
私のほかにもう一人人がいた。

「エーシェル??来ていたの??」

「えぇ…」

エーシェルはお父様の秘書(?)みたいな存在でよく一緒に仕事をしている人だ。

「…お父様はまだ??」


エーシェルは眉間にしわを寄せた。

「今回のパーティはご主人様が行くことが出来なくなってしまわれました。」

「え!?なぜ??あんなに昨日説得したのに…まさかまたお仕事ですか??」

エーシェルはゴホンと咳をついた。


「…ご主人様が事故に遭いました。」

「!!」

え…あのお父様が??

信じられない…だって昨日…つい最近あったばっかりじゃない!!


「その代わりに私が出席することになったのです。」

「…そんな…お父様が…??」

突然突き付けられた事実にショックを隠しきれなかった。
目の奥が熱くなっても、私は歯を食いしばって耐えた。


「あと…コレを。」

エーシェルからいきなり小さな時計を差し出された。

「え…??これは…」

「ご主人様から、『この時計はお前のお守りにしてもっていろ。』との事です。」

「なんで??渡すなら病院で、お父様から直接渡せばいいのに!!」

あ…なに言ってるんだろう。私らしくもない。

「あ、すみません…」 

エーシェルは決心をしたようにゆっくりと深呼吸をした。

「お父様はもう。この世にはいません…」


                —end—