ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: —  ア  リ  ス  — ( No.15 )
日時: 2011/03/24 16:35
名前: 憬ネ (ID: 3ZeOyjRh)

+9+


歌声に引きつけられ、しばらく聞いていくつもりだったが、美しい声の主に遭ってみたくなった。
ドレスを引きずりながら一歩進むとまた歌声が近づいてきて、私はいつの間にか走っていた。
だが突然その声が途切れてしまった。

もう歌い終わったのだろうか。
残念だけど戻るしかない。
でも木の精にまた見つかっても面倒くさいし…
無駄な行動はやめた方が良い。


(戻っても何もないし。)

私は体の向きを変え、歩き出そうとドレスを引っ張った時、

「アリス??アリスじゃないか!!アリス!!」

名前をしつこく呼ばれ、苛立ちながら振り向くと、さっきは無かったはずの長いテーブルがあった。

高級そうなティーカップなどがテーブルの上に置いてある。
一番向の席に座っていた背の高い男はニコニコしながらテーブルの上に立った。

「ハッター!!今はお茶会中!!座れ!!」

小さなヤマネが、テーブルの上に積まれた本に乗ってハッターと呼ばれる男を呼んでいるが、ヤマネの声も気にせずズカズカとテーブルの上を歩く。


「やぁ、アリス。こんにちわ。マッドハッターだ。」

紳士的にあいさつをすると、また笑って言った。

「今お茶会をしているんだ〜よかったらどう??」

ほんわかした声でゆっくりと発音すると、顔をしかめた。

「君、小さくない??ドレスも大きいね。」

「どうも…じゃあ失礼します。」

「あっちょっちょっと待った!!ジュースを飲んだんだろう??大きくなれるケーキをあげるからさっ」

腕を引き寄せられ、しょうがなく席に着いた。

「じゃあまた再会しよう!!」

さっきの歌声はハッターの声だったのか??本当に。
てゆうかハッターは人間なのか??

「ねぇハッター。あなたは人間なの??」

ティーカップにお茶を入れるハッターに聞いた。

「ん??人間だよ??ワンダーランドにいるのは面白おかしい奴らばっかりでもないよ。」

「面白おかしいって私達の事??ハッター!!」

小さなヤマネはぱっちりした眼をこちらに向けた。

「ああそうさ。ヤマネ。まあ、僕はこのなかでは一番しっかりしてる。」

「それは私よ!!」

すると、さっきのティーポットが飛んできた。
ヤマネとハッターは慣れた風でさっと避けた。

ガシャーーン!!

ポット回りながら地面に落っこちた。

「静かにしてくれよ!!お茶会中なのに!!」

手元にある物をぽいぽいと投げているけど、結局テーブルの上のモノを全部投げてしまった。
にもかかわらず一つもあたらなかった。

「この中で一番ヤバいのは三月ウサギね。」

「そうだなー」

「でも3月のときより今の方がマシ。3月になったらは誰にも止められないよ。」

2人は同時にうなずいた。

「アハハ。おかしい人たち」

此処に来て初めて笑えた。
みんなで下に落ちたモノを片づけている途中馬のひづめの音が近づいてきた。

ひづめの音がかなり近づいて来た時、
マッドハッターが小さい小さい私をつまんで空のティーポットの中に放り込んでフタを閉めた。

「えっ??ハッター!!マッドハッター!!助けて!!」

するとまたフタが開いた。
ティーポッドに入りきれないドレスを破いて小さなドレスを作ってくれた。
フタが開いた今、チャンスだと思い、私は腹の中から声を張り出した。

「ハッター!!」

「ちょっと静かにしといて…彼らは君を探している。」

そしてまたまたフタを閉められてしまった。

「マッドハッター、ヤマネ、マーチヘアー!!」

私はティーポットの注ぎ口から外をのぞいた。

赤い!!

赤い馬、赤い兵、赤い服…ほぼ全てが赤い。

馬から降りてきたのは右目にハートの眼帯をしている黒髪の男であった。

「お前らまた狂ったメンバーと狂ったお茶会か。」

男は鼻で笑った。
するとマッドハッターがまるで酔っているかのような声を出した。

「今日はこのメンバーだけでお茶会がしたいんだ。部外者は去ってくれるかい??
それともメンバーに入りたいのかな??ハートのジャック。
小さい頃は一緒にしたのになーお茶会。」

赤の兵の誰かが思わず笑ってしまい、眼帯の男は顔を赤くして睨んだ。

「フンッ。誰がメンバーに入るか。それより聞きたい事だ。」

「アリスがワンダーランドに来たという情報が入った。こっちにきているか??」