ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ニゲラ ( No.20 )
日時: 2011/04/06 21:36
名前: 葵宇宙 (ID: ezn6wPAf)


見慣れた町並みが広がる。

道路、商店街、学校、公園……。


「止まって!!」


急停止する車。

突然声を発した私に驚いたようだった。



「あぁ、ここは少年が殺害された場所。」



「ほんとによく知ってるのね。」



何年ぶりだろう。

あの日以来だろうか。

まったく近寄ることがなかった公園。



「静かな……穏やかな町なのに、ここで残酷な殺人事件が起こるなんて。」


奏真は言う。

ここで秀は息絶えた。

そう思うと涙が溢れそうになったが、奏真に気付かれてはいけない。

この町の人以外、私が秀の彼女であったことは知らないはずだ。


報道は私の名前の公開を避けていた。

いつ、また狙われるか分からないからだ。



「あの少年は……ここに彼女といたそうですね。」



静かに言う。

ドキン、と胸が大きな鼓動を打つ。



「その彼女をかばって、少年は殺害された。」


「そ、そうよ。」



どこまで詳しく知っているんだ。

この捜査を担当するこになって、また調べたのか。



「その彼女もきっと……辛い思いをされたでしょうね。」



奏真は顔をゆがめる。

まるで、その気持ちが分かるかのように。