このときの悠希には恐怖というものは、もうなかった。すんなりと承諾する男。もう観念したように見えた。居間のようなところに案内される。小さなちゃぶ台を挟んで向かい合わせで座る。「吉田陽介さん……今は加藤俊吾さん、で間違いないですね。」静かにうなずく。吉田陽介。私と同じ小・中学だった。パッとするタイプではなかった。話したのは数回ぐらいだ。その話した内容と言っても、悠希が気を利かせて話した程度だった。