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Re: The grave of princess_姫ノ墓_ ( No.3 )
日時: 2011/03/24 13:42
名前: あおと。 ◆7Mz777RO6k (ID: 38xu/37K)

**.1/墓石の少女

「ねえ、墓石の少女って知ってる?」

前触れもなく聞いてきたのは実頌とみた。ぼくのおさななじみだ。
ぼくは聞きなれない言葉に首を捻った。
墓石というおどろおどろしい言葉に少女なんていう可愛らしい言葉が合うはずもない。

「墓石の少女っていうのはねえ、最近流行ってる都市伝説!」

とみたは本当にそういう話が好きだ。
小さい頃は何度泣かされたことだろう。
とみたは目を輝かせて説明を始めた。

「三丁目のお墓にね、ちっちゃい女の子が住んでるの。でね、なんでも願いをひとつ叶えてくれるんだけど、質問にちゃんと答えないと連れて行かれちゃうんだって!!」

思わず鼻で笑ってしまった。
なんでも願いを叶えてくれる?
そんな簡単に願いがかなったらどれだけいいだろう。
だいたい、墓なんかに住む頭のおかしい幼女が本当に願いを叶えてくれるわけがない。

「どうでもいいよ、そんな話。ぼくには関係ない」
「またそうやって馬鹿にしてー。いいじゃん、たのしいじゃん。それでね、今日確かめに行こうと思うの。ついてきてくれない?」

嫌に決まってる。誰が好き好んで墓場になんか行くもんか。

「嫌だよ、墓なんか盆と正月行けば十分だ。実頌が一人で行けばいい」

そう吐き捨てるように言うと、とみたは頬をぷうっと膨らませた。

「だって怖いじゃん! それに昔はとみたって呼んでくれたのになんで最近は実頌実頌って呼ぶのさ!! カッコつけんなー—!!」

むくれたとみたを置いて、ぼくは教室を出た。

『なんでも願いをひとつ叶えてくれる——』
甘い言葉がぼくの頭の中を廻っていた。