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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕等の知らない物語 ( No.1 )
- 日時: 2011/03/27 17:57
- 名前: 千臥 ◆g3Ntw.kZAQ (ID: QiHeJRe.)
零ノ物語
これは多分、夢だろうか。
いや、多分じゃない。
これは夢だ。
夕日で紅く染まった公園。
「どうして泣いてるの?」
綺麗な黒髪の少女が、公園の隅で泣いている少年に話しかけた。
少年は手で覆っていた顔を上げて、少女を見る。
「皆、僕の髪も目もおかしいって言うんだ……。化け物って」
少年は黄金色の瞳を少女に向けた。
「私は綺麗だと思うよ? 君のその白い髪も、金色の目も」
少女の声は温かく少年を包み込む。
「私が一緒に遊んであげる。君の名前は?」
その言葉に少年は涙を止めて満開の笑みを浮かべた。
「僕は……僕の名前は狐守萩夜。……君は?」
少女は優しく微笑んで
「私の名前は****だよ。よろしくね、萩夜君」
少女の名前は聞き取れない。
そこだけがまるでフィルターに覆われてしまったかのように、耳に届かなかった。
聞き返そうとした時、
「萩夜!!」
少女とは別の声に遮られ、少年は勢いよく振り返る。
振り返った先は一面の闇で
少年の意識はそこで途切れてしまった。
つまり、夢から醒めたということだ。
目の前にはいつもと何変わらぬ天井があって、眠気の残る体には容赦なく日光が降り注ぐ。
そしてベッドの脇には見慣れた友人の姿があった。
「おはよう。寝坊三昧の萩夜君」
あぁ、最後に呼ばれたあの声は友人のものだったのか。
萩夜は欠伸を零しながら思考を働かせる。
懐かしいような、夢だった。
まるで昔の記憶を見ているような……そんな夢だった。
「萩夜!! 早く準備して学校行くぞ。遅刻する!!」
怒鳴る友人を宥めながら、萩夜は着替え始めたのだった。
零ノ物語
(俺はこの夢が全ての始まりを告げるものだなんて、考えてもいなかった)
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