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Re: 血の色赤頭巾【ちょっと変更しました】 ( No.14 )
日時: 2011/03/31 18:54
名前: 桜木 無羽 (ID: 3ZeOyjRh)

5話 赤と血



「!!」


私は夜、寝ていると『おかしな夢』を見るのだ。

その夢とはいつも赤ずきんをかぶった女の子の声が聞こえたところで終わってしまう。
何を言っているのかは全くわからないが、少しずつ、夢の中にいる時間が長くなっている気がする。

あれからもう、五年も経つって言うのに、早く忘れたいのに。
あの日の事、一つも忘れていない。

この夢のせいで————…


私はイヴが川に落とされ、行方不明になった日からたった一日で拾われた。
イヴがいなければ、長い間辛い思いをしなくてよかったのに…

あの女の子の事を少し感謝してしまっている自分が悔しい。
そのおかげで今、自分はここで何事もなくに生きているのだから——…

私を拾ってくれたのはこの町に住む名高い貴族、スチュアート家の一人だった。
そして、私の名前はシェラ・スチュアートとなった。
これからも何もない日々が続くと思っていた私は、またあんなことが繰り返されているとは思いもしなかった。



ハンス・スチュアート。道に倒れている私を一番最初に見つけて下さった人だ。命の恩人。

「ハンス様、こんにちわ。」

でも彼は私に気付くと、素気なく返事をし、いつも私の横を通り過ぎていく。

なぜ…??

ここにいる人間、なぜか私によそよそしい。

なんで———…??



ここの城の庭は美しく、いろんな色の薔薇が咲いている。
中には見たこともない色もあるが、やっぱり一番好きなのは赤い薔薇だ。

全ての薔薇に水やりをしていて、ふと気付くと私とおなじぐらいの女の子がお城の敷地に入ってきているではないか。

「…あの…あなたはスチュアートの人では無いでしょう??」

「……」

「すみませんけど、ここはスチュアード家の者だけが入れる場所なので…許可なく入ることはできません。」

こんなに近くにいるのに、女の子の顔が見えない。

「あの——…」

「あなたは、何色が好き??」



え??



(薔薇の色の事??)




「私は…赤が好き。」



そんな事を言っている場合じゃない。
この女の子は此処にいてはいけないのだから。

「私もよ。赤が好き……気が合うみたいだね…私達。」




「…」




「よかったら友達にならない…??」





「…え……??」

何よ、いきなり。


「私はあなたの為ならなんでもするから。友達…なってくれる??」




「……いいよ。」

——…??私何も言ってない…!!私が言ったんじゃない…!!
まるで何かに操られているみたいにさらりと答えてしまった。
少女はクスクスと声に出して笑うと、また何かを言った。


「ありがとう…ところで、あなたの名前は…??」


言ってもいいよね??
そうだ。ややこしいことにならないようにとっとと終わらせた方がいいよね。



「…シェラよ。…あなたは…??」

「私———…??私は






             

             イヴ。」







「イ……ヴ…??」









少女は赤い薔薇をこぼれるほどたくさん手に抱きしめ、嬉しそうに笑う。

その手には金属でできたハサミを握っていて、止めどなく赤い液体が刃先からポタポタと落ちていた。