ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 血の色赤ずきんちゃん ( No.6 )
日時: 2011/03/31 12:46
名前: 桜木 無羽 (ID: 3ZeOyjRh)

3話 妹の死んだ川


チチチチチ…


雀の囀りと自動車が行きかう音で目が覚めた。


今日もまた始まった。
何もない一日———…
私は母の友人の家には引き取られないことにした。
そこの主人はきっと私がイヴを殺せないのを知ってて条件に入れたんだ。
馬鹿にしてたんだ。


妹は——…まだ寝ているか…

妹にとっては、寒い路上の上でも平気なのかな。
だって、いつも寒い物置部屋にいたから。それがイヴに割り当てられたただ一つの自分の居場所だった。
だからそこにしか居てはならなかった。

「はぁ…」

その時、私はこれから先、生きてて何があるのか。と脳裏に浮かんだ。

私には姉として、妹を守っていく義務がある。
一人より二人の方が心強いはずだし、

これからはイヴ一人の為に生きていくのだ。

一時は他の町に行き、使用人として働いていたが、イヴの目の事がばれて、結局追い出されてしまった。


「お姉ちゃん??どうしたの??」

私達の新しいすみ場所となった町の路地裏の近くには、こんなにも広いのかというくらいの川がある。
その川には、大きいにも構わず、人が二人並んで歩けるかどうかの小さい橋がかかっている。


「ううん………何もない。」


ここには貴族が多い。
上と下の差がハッキリしている。
私達のように家が無く、もう何年も此処にいる人だって勿論いる。
私達とは逆の存在の人は、此方をみて笑っているのだ。
その光景を見ながら、私は行った。


「この町を出よう。」


「またお引っ越し??こんどはどんなところに行くの??」


「私達の事を知らない人がたくさんいる町だよ。」


いつも地図を見ながら貧しい町を選んでいるが、最後は追い出されてしまう。
ただの貧民ならまだしも、イヴには『悪魔の赤い目』がある。
なかなか安定しない生活。

「明日にこの町を出よう。」




妹が寝付いた夜。
貴族とは全く無縁の世界が広がる。
目の前の川は早朝とは違い、激しく波を立てて流れていた。


「あなた一人なら、引き取り手が見つかるかもね…」


「!?」


後ろを振り向くと、赤い頭巾をかぶってクマの人形を持った女の子がいた。
私とおなじぐらいの可愛らしい人だった。

「…………」

「妹さんを置いていけばいいじゃない。」

「……!!」

「…そんな…この子を置いていくことなんてできない……私の大事な妹なの。」


「クスクス…だって足も不自由で、悪魔と言われる子なんて、誰にも必要とされないし…しかも姉のあなたは何も悪くない…
 あなた一人なら、なんとか引き取り手が見つかると思うわ。」


「やめてよ………私は…ここまで頑張ってきたのに………頑張ってるのに…」

「そうやって努力するのって疲れるでしょ。本当は心の奥では、早くこの子が無くなればいいとか思ってるんでしょ??」

「……」


ひどい

この子

でも

『早くこの子が無くなればいいとか思ってるんでしょ??』

これは私が一番考えないようにしていた言葉だった。

「それは…っ」

その時、今まで我慢していた気持ちが一気にあふれ出した。

「私だって、元の生活の方がよかったよ!!今までイヴを見てきて、人事だって思ってたけど、
 この子のせいで私がこんな目にあうなんて、思ってなかったもん!!」


「………」


「私は…もうイヴなんて大嫌い。消えたらいいのに…」



…私…今なんて…??



「そう。じゃあ私が助けてあげる。」


その子は毛布に包まれていたイヴを抱き上げ、私の方を向いて笑った。


「何するの!?やめてよ!!私の妹…!!」

「消えたらいいって??じゃあ叶えてあげるよ。」



橋の上に移動し、毛布を引っ張り上げた。


「な——…」


その瞬間、耳の奥に、なにかの音が聞こえた。
まるで、川になにかがおとされる音。



「ほら。良かったね。」



そのおとはなんのおと………??




「い…」




だいきらいないもうとがしんだおと………??





 
「いやぁあああああああああああああああああ!!」


クス…クスクス…


少女は楽しそうに笑って、町の中に消えていった。