ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕と戸口さんともうひとつ ( No.19 )
- 日時: 2011/06/19 21:32
- 名前: 揶揄菟唖 (ID: 7qKHqMvL)
僕と戸口さんと隣の席
左に目を向ければ、雨が降っていた。
しとしと。
草を雨粒が叩く音が僕の耳に侵入し、やがて消える。
上を見れば空が重たい色の雲を体中に抱えていた。
しとしと。
右を見れば、隣の席の戸口さんが必死に教師の声に耳を傾けてノートをとっていた。
最近までは寝ていたのに。
授業なんて世界の中で一番にどうでもイイことだっていっていたのに。
・・・そこまではいっていなかったか。
僕は前まで戸口さんがやっていたように腕枕を作って自分の机に顔を伏せる。
でもすぐに暗いだけのその体勢に飽きて顔だけ戸口さんのほうに向けた。
しとしと。
教師の言葉なんてはるか遠くに聞こえる。
戸口さんは僕の視線に気付かないほど熱中しているようだ。
あぁ、つまらない。
そうおもってこんなに戸口さんが真面目になってしまった理由について考えた。
おそらく、いや、きっと、いや、確実に。
『アレ』が原因か。
僕の視線は戸口さんを通り過ぎて、さらに奥へ。
「・・・」
戸口さんの右隣の席。
そこには今は誰も座っていない。
前まではその机は使われていたけど。
今は誰もいなかった。
ただひとつの空席。
その机の上には白い菊の花が花瓶にさしてある。
しとしと。
少し萎れているその花を僕は目を細めながら見つめた。
戸口さんがぼやけて見える。
「・・・何?」
ぼけーっとしていると、戸口さんがこっちを向いていた。
ただキミに見とれていただけだよ・・・
なんてー。
「・・・いやぁ、がんばってるなぁ、とおもって」
ただ、あの白い花が、人の思いの象徴が萎れているのを無機質にみていただけ。
「・・・おかしい?」
変なことを聞くねぇ。
そういうってことは自分で自覚してるってことかな。
しとしと。
雨の音につられて笑いそうになるのを堪える。
「・・・そうかもね。どうしたの?」
わかってるけど、聞いてみた。
返ってくる答えも、戸口さんが俯くのも、知っていたけど、聞いてみた。
「・・・」
しとしと。
ぐちゃ。
通行人の誰かが蛙を踏む音がした。
ばしゃ。
車が水溜りを轢く音もした。
「あ、のね・・・アイツが死んじゃったから・・・」
アイツ、というのは戸口さんの隣の席だったやつだ。
「後悔してるの?」
僕が次の言葉を言ってしまうと戸口さんは驚いたように眉間に皺をよせた。
「・・・どうして・・・アイツなんだろう・・・」
つまり、自分を責めてるんだね。
「別に、アイツじゃなくて・・・」
戸口さんは自分のシャーペンを机に突き立てた。
ガッガッ。
しとしと。
人工的な音が追加されてにぎやかになった。
「・・・私でも・・・別に・・・よかったのに・・・なんの取り柄のない私でも・・・」
僕の視線はもう戸口さんを映していなかった。
白い菊。
それだけが僕の視界を支配している。
「だから、私・・・あいつがしたくてもできなかったこと・・・やろうって思ったの」
・・・へぇ。
そんな、つまらない理由か。やっぱり。
「じゃあ、」
いいかけて、息を呑む。
まぁ、いいか。
僕には関係ない話だし。
僕は僕のやりたいことをするために、息を吸う。
戸口さん。
キミのやりたいことは、どこにいくの?
しとしと。
白い菊の花びらが僕の視界の真ん中で息絶えた。
〜end〜
七話目です。
なんかこれ、自分的に面白くないなぁ、と思いました。
(しかも戸口さんの一人称でちゃったし。ださないようにしてたのに・・・)
でも、なんか感動・・・なのかな?
わからない・・・自分でも何をしたかったんだろう。
それじゃあ、またいつか会いましょう。
今度はちゃんと自分でも面白いと思える物を書きたいです。
いや、書きます。
ネタが切れるまで、私は消えないはずです。