ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 僕と戸口さんともうひとつ ( No.32 )
日時: 2011/09/24 19:10
名前: 揶揄菟唖 (ID: XOYU4uQv)



僕と戸口さんと夜の悪臭


夜、だった。

空を覆う厚い雲は、明日の朝にはなくなるそうだ。
今、ラジオがそう言った。

時々かみそうになるアナウンサーがつい訳三時間前に起こったニュースを読み上げる声以外、車の中は静かだった。

後は時々停車した時に外から入り込んでくる街の雑音。

そんな時間が、僕は好きだ。

だからつまりそれを邪魔する客が現れると、なんだか自然と眉間に皺がよってしまう。
そろそろ時間も時間だし、酔いつぶれたサラリーマンの客が多くなってくる。

めんどくさいなぁ。

短く息を吐き出して、アクセルを踏む。

視界の先に立っているのは、女性だった。

珍しいな。

大抵、こういう時間に乗ってくる女性といえば、金髪でメイクばっちりの人か、ОLの人が多いのに彼女は身軽な私服で身を包み、肩くらいまで綺麗な黒髪を伸ばしていた。

彼女の前に停車し、ドアを開ける。

街の雑音が一気に大きくなってドアを閉めると同時に消えた。

「+++までお願いします」

「はい」

車がゆっくりと動き出す。

彼女はしばらく黙っていたが、信号に引っかかってとまった時に漸く口を開いた。

「ラジオ、消してくださる?」

「はい」

そういえば僕、はい、しかいってない。

「お仕事は、何を?」

それを巻き返そうと、彼女の顔をバックミラーで確認しながら問う。

「人を、探していたの」

・・・それ、仕事じゃないよ。

「・・・あなたは、なにを?」

右折をするためにハンドルを切った。

「みたとおり、しがないタクシーの運転手ですよ」

彼女はずっとバックミラーで僕の顔を見つめている。

「違うわ。あなたはなにを《していたの》?」

呼吸が一瞬、乱れた。
眼球が一瞬、疼いた。

「・・・どういう」

彼女は優雅な動作で、髪を耳にかけた。

「因みに私はさっき兄を殺されたわ」

あぁ、終わった、見つかった。

「丁度、三時間ほど前よ」

どうする、どうする。

「現場に大量の血が残されていたのに、なぜか死体だけ見つからないの」

今直ぐにでも壁に車を衝突させて、この女ごと死んでしまおうか。

いや、それじゃあダメだ。

それじゃあ、意味がない。

逃げなくては。

「・・・なぁーんちゃって・・・」

逃げなくては。

「おにいちゃんが死ぬわけないよねぇ」

逃げなくては。

「殺されたのは、タクシーの運転手だよね?」

逃げなくては。

「あなたが殺したんだよね、」

逃げなくては。


「おにいちゃん」


この女から、逃げなくては。

「どうして逃げるの?私はこんなに愛しているのに。やっぱり、動けないようにしないとだめなの?」

殺される。

僕はドアを蹴り破るようにして開いて、外へと逃げ出した。

後ろの女を振り返ることもなく、走る。

「おにいちゃん」

その声に振り返ると、

僕の骨が軋む音がした。

吹っ飛ばされたらしく、痛みが感じないほどだ。

真っ赤な視界の中で最後に見たのは、あの女の笑顔だった。


「ずぅーーっといっしょだよ、おにいちゃん」


〜end〜


九話目です。
はっ。
面白くないですね。
久しぶりに更新してみたら、このざまだ。
すみませんでした。
次で十話ですが、更新するのはいつになるでしょうか。
わたしにも分かりません。

というか今回どっちも戸口さんだし、性別でてるし、最悪ですね。