ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 私と清田くんとあとひとつ【目次かいたよっ!よっ!】 ( No.39 )
- 日時: 2012/01/15 14:32
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: S15uwbP1)
- 参照: テスト終わったーーーーー!!
私と清田くんと隣のキミ
その日は雨が降っていた。
それも豪雨ではなく耳に優しく入り込むような音を奏でる、雨。
私はそんなことはどうでも良かった。
私はただもう、何も考えないんだ。
私は決めた。
アイツのために生きる。
アイツはもう戻ってこない。
そんなことは知っている。
でもやっぱり。
「………」
さっきから隣の視線が五月蝿い。
視線が五月蝿い、何て表現あるのかな、なんて考えてみた。
仕方なくノートをとる手を休めて隣へと視線を送り返す。
するといつものようにそこには清田くんが居た。
当然だけれど。
清田くんは腕枕を作り私を見上げるように見つめていた。
「………何?」
少し冷たく言う。
だって私は悪いけど清田くんなんかに構っている余裕は無い。
私はやらなくてはいけないことがある。
「………いやぁ、がんばってるなぁ、とおもって」
清田くんはと惑う様子も微笑む様子も見せずに呟いた。
このくらいの声量なら教師に聞こえる心配もなさそうだ。
それに教師は今、ずっとしゃべっていた女子生徒に嫌味を言っているからこちらを気にする素振りは見せていないし。
「………おかしい?」
私は清田くんにそう問いかけた。
自分でもわからない。
コレは可笑しいの?
アイツのためにこうすることは変なの?
なんで清田くんに聞いたのかはわからない。
どうしてだか、清田くんなら正しい答えをくれそうだった。
私を助けてくれそうだった。
ただ、それだけ。
清田くんを利用しただけ。
「………そうかもね、どうしたの?」
清田くんの表情は普段からあまり変わらない。
でもなんでか今は分かった。
バカにしている。
私を。
アイツをも。
それに怒りを覚える権利は果たして私にあるのだろうか。
「………」
ない。
きっとない。
そんなものアイツが生きていた頃だって、今なら尚更、ない。
「あ、のね………アイツが死んじゃったから………」
私は今にも泣きそうだった。
そう。
アイツはもういない。
私の隣の席にはもう誰もいない。
誰を責めていいかわからない。
ないないない。
何も無い。
私には、何も。
アイツだけが私の『何か』だったのに。
アイツがいれば私はそれでよかったのに。
「後悔してるの?」
容赦ない清田くんに私は眉間に皺を寄せる。
優しくないね。
アイツと違って。
そうやって私はもう無い影を探す。
清田くんがカワイソウだよね。
私の脳内でもういない人と比べられているんだから。
「………どうして………アイツなんだろう………」
私の胸に変なものが込み上げてきた。
コレはなに?
なにも無い私の中から何が込み上げてきているの?
それを吐き出していいんだろうか。
ダメだろうな。
きっとそれをアイツは望んでいない。
「別に、アイツじゃなくて………」
ダメだろうから。
私はそれを飲み込もうと机にシャーペンを突き刺した。
何度も、何度も、繰り返す。
「………私でも………別に………よかったのに………何の取り柄のない私でも………」
苦しかった。
このことは誰にも言わないようにしようって思っていた。
でも私はまた救われたい。
誰かに救って欲しい。
だらだらと口から私の弱みがあふれ出す。
「だから、私………アイツがしたくてもできなかったこと………やろうって思ったの」
それが何か、知らないくせに。
清田くんの目線は私にしっかりと向いていた。
ねぇ、よかったよ。
清田くんの席が左隣で。
だって私の右側には嫌な物しかない。
そっちを見なくていいから。
向き合わなくていいから。
「じゃあ、」
清田くんは何かを言いかけて飲み込んだ。
偉いな、清田くん。
私はこんなにだらしないっていうのに。
でもその続きは聞かなくて良かった。
まだ知らないフリを続けていられるから。
〜end〜