ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕と戸口さんともうひとつ ( No.4 )
- 日時: 2011/03/31 22:28
- 名前: 揶揄菟唖 (ID: AirZuNBn)
僕と戸口さんと錆びた鉄
「ねぇ」
《どうしたの?》
僕が答えると戸口さんは嬉しそうに頬を緩ませた。
そんなに喜ばなくても良いのに。
「あのね、キミのこと大好き!」
満面の笑みでそういわれるといくら僕だって恥ずかしい。
それでも、コレは伝えとかないといけない。
《僕も戸口さんのこと好きだよ》
「ほんとに?」
《ほんとにほんと》
それも、心から好きだ。
「大好き?」
《うん 大好き》
戸口さんもそう言ったのに、戸口さんは顔を真っ赤にして目線をずらした。
やっぱり、戸口さんはおもしろい。
反応があからさまだから。
《それより戸口さん》
「なに?」
顔をいつもどうりの色に戻してから首を傾げる。
髪の毛がはらはらと戸口さんの顔をすべっていく。
目にかかっているのを払わずにしているから痛そうだった。
《あっちに行こう》
戸口さんの動きが、止まった。
ぴたりとそこだけ時が止まったように。
口だけが、蠢く。
「な、んで?」
どうやら僕が指をささなくても分かったようだ。
手間が省けて助かる。
《いいにおいがするんだ》
「い、や」
両手を合わせて首を横に激しく振るものだから、髪がぐちゃぐちゃになってしまった。
《どうして?》
僕は行きたくてたまらない。
「・・・いきたくない・・・」
遂に体までが震え始めてしまう。
怖いことでもあるのかな?
《あっちに何かあるの?》
戸口さんが怖いと思うものが。
「・・・」
黙ってたらわかんないよ。
《・・・あっちに大好きな人がいるの?》
体の震えが止まった。
僕は知っている。
あっちに、何があるのか。
「・・・うん」
小さいけれど、ちゃんと聞こえた。
《大好きな人が、怖いの?》
こくりと戸口さんがこたえる。
《どうして?》
首も、口も、答えない。
《もう、動かないから?》
首も、口も、何もかも。
《もう、腐ってるから?》
戸口さんの目から涙があふれ出てきた。
それは地面に落ちてあっけなく形を崩す。
《もう、死んでいるから?》
それだけじゃあないよね。
もうひとつ怖い理由があるんだよね。
《戸口さんが、殺したから?》
「ごめ、んなさい」
誰に謝ってるのかわからないその声は僅かに空を揺らしてやがてとけていった。
でもね戸口さん、
《僕だって早く成仏したいよ》
顔を上げた戸口さんの前に、僕は居たのだろうか。
〜end〜
二話目です。
一話目と関連性はないですよ、はい。
これで完全に戸口さんは女の子になっちゃいましたね・・・。
まあいいんですよ・・・。いいんだ、きっと。
それではまたいつか!
