ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 私と清田くんとあとひとつ【目次かいたよっ!よっ!】 ( No.40 )
- 日時: 2012/07/27 19:07
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: 5VUvCs/q)
- 参照: http://スカイプやってますよー興味あったらお気軽に
私と清田くんと約束された日常
『我輩は、猫である』
この言葉から始まる小説を、私はこの間読んだ。
読書は好きじゃないけれど、猫は好きだから。
違う。私は、猫は好きじゃない。あの子が、好きなだけ。
今日も暑いな。汗をぬぐいながら、道を走る。あの子を探して、走り回る。
蝉がうるさい。ときどき振り返りながら、走る。
汗がひどい。帰ったらシャワーを浴びよう。
「清田くんっ!」
彼の名前を呼ぶ。彼の名前は、私が付けた。変な名前だけど、子供のころにつけた名前だから、特に由来は無い。
昔から私は変な子供だったから。
私の声に応えるように、日陰から彼が現れた。
「あ! いた!」
彼は歩いて、のんびりと私に近づく。私も同じように彼に近づいた。
「ただいま!」
私が言うと、清田くんも鳴き声を漏らした。私を迎えてくれているようで、嬉しくなる。
清田君は私の足に寄り添う。野良猫は汚いっていうけど、清田君ならいいや。汚くないよ、きっと。
「今日はね〜」
清田君は、私の話を聞いているかのように、じっとしている。話が終わるまで、居てくれる。興味無いだろうけど、聞いているフリをしてくれる。
優しいなあ。
そんな日が、ずっとずっと何年も続いてきた。私が赤ん坊の時から、ずっと。
「あ、そうだ」
喋るのを止めて、彼に顔を近づける。
「最近ね、よく野良猫が殺されちゃってるんだって」
ここの近くで。原因は不明。何かで引き裂かれたように、無残に。誰にも気づかれず。
私は彼の鼻を指でつついた。
「だから、キミも気を付けてね。……キミが死んじゃったら、淋しいよ」
彼は、しっぽを揺らす。嬉しいの。
私と一緒に居るの、嬉しいの。
私も、嬉しいよ。
「……そろそろ帰るね。また明日」
また明日も、ずっとずっと君は私の前に現れるんでしょう。ずっとずっと、一緒に居るんでしょう。
しばらく歩いて、振り返る。
彼はまだ、私に尻尾を振っていた。
+ + + +
「ただいま!」
暑いね、今日も風がない。
清田くんはまたここにいる。
「昨日、また野良猫が殺されちゃったんだって……」
淋しい話だよね。
本当に、悲しい話だ。
こんなに哀しい話ことをするのは、誰?
ねえ、清田くん。
「……キミも、仲間がいなくなっちゃって、淋しい?」
キミは笑うの。
幸せだなぁ。
私も、幸せだよ。
キミが生きていてくれて嬉しいよ。
〜end〜