ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力者レベルゼロ Liars' feasts ( No.18 )
- 日時: 2011/04/07 13:51
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: MlJjY9/z)
「銃で死ぬって、本気で思ったの?」
立ち上る硝煙と、砂埃をなぎ払い、クラウンはその姿を現した。 傷も無く、特にこれといった外傷は見受けられない。
「ほう、能力だけだと思っていたぞ」
シグマはそういい残すと、右手を挙げた。 すると、シグマが消えた物陰から大きな影が顔を覗かせる。 その姿は、干からびた皮膚の塊とでも言うのだろうか? 茶色く変色したかのようなその巨体は、恐らく顔であろう場所をクラウンへと向け、恐らく目であろう黒い斑点が、クラウンを凝視する。
「うっわ、気持ち悪」
クラウンの言葉を聞き取ったのだろう、突如その巨体はクラウン目掛けて、口であろう部位を大きく広げて迫り来る! だが、クラウンから見れば十分そのスピードは遅い。 避けて、ポケットから取り出した短剣で——切り付ける!
「何だよ、これ……」
切り付けたのが、間違いだった。 その巨体は、壁にぶつかり、再びクラウンを探し始める。 だが、それは大した問題ではない。
切り付けた奴の背から、黄色い膿のような液体が噴出し、短剣の刃を溶かしたのだ。 何だ、コイツは?
「グロロロロ……」
その大きな塊は、低いうなり声とともに、再びクラウンの居場所を見つけたのだろう。 口を広げ、再び学習もなしに迫り来る! だが、それがいまや脅威と言う脅威だ。
避けようにも、背から噴出している奴の体液に触れれば、こっちが溶かされる!
如何する、大人しく喰われるか? いや、それは論外。 マトモに考えよう。
近づけば奴の口の中。 避ければ避けたで奴の体液の餌食……。 足元から避けようにも、奴の足は8本。 そしてその全てが稼動し、猛スピードで突っ込んでくる。 滑り抜ける隙間も無ければ、腹に体液が伝い、触れたら単純に危ない。 そうでなくとも、その足の一本に蹴り殺される可能性も否定できない。
となれば選択肢は二つ。 壁を駆け上り、避けるか、何か別の方法で相手の気を違う方向へ向けるかだ。
見た限り、声に反応してこっちを向いた。 つまり、コイツは耳がいい。 そして、口がある辺り、顔だろうか所にある特に大きな目であろう斑点は何度もこちらを向いたが、最終的には声と言う音で判断していた。 そして、嗅覚が鋭ければここの居場所はそこまで探らなくとも即座に分かる。
つまり、コイツは視力が殆ど無く、嗅覚も特に脅威と言う脅威でもなく、動きものろい。 そして、音に反応する。
つまり、音で相手の気を別の方向へ向ければこっちへはこない。
クラウンはポケットを探り、何か投げるものを探した。 すると、いいものがあるではないか。 その手に乗っているのは、手榴弾。 それも、結構大きい。
「そんなにボクが食いたいなら、先にこっちを喰いやがれ!」
咆哮とともに、開け放された奴の口に手榴弾を投げつける! すると、動きが……止まった?
いや、あの野郎、ボクを喰ったと勘違いしてる!
何だ、失礼な奴だな。 でも、そいつの寿命も、
「これで終わりだ……!」
その言葉とともに、奴が爆発した。 そして更に、爆発に連動してクラウンは一気に後悔した。
奴に手榴弾を喰わせたのは間違いだった。 体内から爆発し、そのせいで腸もろとも奴の体液が当たり一帯に飛び散ったのだ。
クラウンは自分の足元のタイルを引き剥がし、盾にする事で何とかそれを防ぐ。
そういえば、ここはどこだ? 廃墟のようにも見えるが、気のせい……ではないらしい。 風化して、内装がボロボロになっているところも多々見受けられる。
だが、その景色に気をとられている場合ではなかった。 周囲に散らばった奴の死体を、貪り食う音がクラウンの耳に入ったのだ。 しかもそれは、一つではない。 少なくとも、2匹以上の集団。
- Re: 能力者レベルゼロ Liars' feasts ( No.19 )
- 日時: 2011/04/07 12:30
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: MlJjY9/z)
「これはマジですか?」
何かのアニメのタイトルにも似た言葉を、クラウンは思わず発した。 それとともに、その“群れ”は一斉に死体を貪り喰うのを止め、その目玉のような斑点をクラウンへと向けた。 良く見れば、そいつ等の体にはまだ新しい血糊がベッタリと付いている。 どうやら、こいつ等を管理していた奴等が何かミスして喰われたらしい。
だが、そんなミスなど、どうでも良い。 問題は、一斉に、その群れはクラウンへ向かって突進した事だ。
「え? え?」
状況把握が出来ない。 それに、相手は能力者ではなく、ただの怪物。 能力の発動なども出来ず、体術のみで戦おうにも奴等は仲間の体液を浴び、触れるだけでこちらが溶かされる!
「グロロロロ……」
うなり声とともに、その巨体は迫り来る! 後、7メートル6メートル、5、4、3、2、1……!
その無数の巨体がクラウンへと後1メートルと迫ったその時だった。
「グラビティー・バインド!」
その巨体が、重力に逆らって後ろへと吹き飛び、背後の壁へと叩き付けられた。
……誰だ?
「キミがクラウンか、奴等の無線を傍受するのは骨が折れたし、もう死んだかと思った。 案外、しぶといな」
黒髪の男が、クラウンの背後で能力を発動した。 紅と青のオッドアイが、怪物どもに睨みを利かす。
「巨大クマムシ如きが……」
俺に楯突こうとは、
「100年早えんだよ」
静かに、そして非情に重たいプレッシャーが、クマムシを遠ざける。 だが、その男はクマムシを逃がす気など一切無い様子で、右で弧を描くと、一閃。
紅の光線が、クマムシのうちの一匹を貫いた。 光線が通った後は焼け焦げ、群れのうちの一体に当たったはずが、その周囲に居たクマムシの皮膚が溶け、原形を留めぬ肉塊へと姿を変える。
「雑魚が、俺達の救世主に手ェ出すんじゃねえ」