ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力者レベルゼロ Liars' feasts ( No.26 )
- 日時: 2011/04/07 17:31
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: MlJjY9/z)
「ほう、それは中々面白いことを聞いたな」
廃墟の物陰から、気配も無くシグマが姿を現す。 良く考えてみれば、コイツがここに戻ってくるのは当たり前だ。
自分の所の部下が戻らなかったとなればクラウンが殺したと言う可能性が高まる。
「シグマ・タイムドレインか。 中々面白い奴が来たもんだ。 で、どうかしたか? お前じゃ俺を殺せねえよ」
童子は挑発するように右腕を前に突き出した。 すると一瞬、風が吹いたと思うとすぐそばに居た童子が、シグマの目の前へと迫っていた。 だが!
「遅い!」
シグマは一瞬、時を戻すとバランスの崩れた童子の両腕を切り落とす! そして、それに対応し、童子が蹴りを入れようとしたところで更に時間を一瞬戻すと、蹴りが自分に当たる前に童子の首を易々と刎ねた。
「最強じゃなかったのか!」
思わず、呆れ交じりで声が出る。 だが、驚くのはここからだった。
「ああそうだ、俺は最強なんだよ」
「何?」
刎ねられた首が動き、自らの胴体に吸い寄せられるかのようにして元の定位置に戻るとそれに連動して切り落とされた両手両足が彼の胴体にひきつけられ、元の五体満足の状態に姿を変えた。
「俺は童子だぜ? 手をもがれようが、足をもがれようが、首を刎ねられようが、細切れにされようが! 死ぬわけねえだろ。 まず、自己紹介といこうじゃないか。 俺は黒薙童子。 アンデットの能力者にして……魔法使いだ」
その言葉を売裏付けるかのように彼は手のひらに青白い炎を灯して見せた。 そして、その炎はシグマへと飛んでいく!
「何だ? 魔法とは、この程度か……!」
腰から抜いたサバイバルナイフで、その低速で自らへと飛んでくる火の玉を、シグマは易々と受け止めた。
だが、油断していたシグマの表情が一気に険しくなる。
「何だ、これは?」
サバイバルナイフを凝視し、童子へと向ける。 見れば、炎がナイフを凍らせていくではないか。
「だから、言ったろ? 俺は魔法使いだってよ」
童子は大剣を何も無かった空中から取り出すと、片手で軽々と構え、
「死ぬ覚悟は出来たか? シグマ。 アンデットが相手を殺すと相手もアンデットになっちまうからな、死ぬように銀の剣で切り裂いてやるぞ?」
右手でその剣をグルングルンと振り回すと、建物にぶつかることを無視してシグマへと迫る!
「チッ!」
シグマの舌打ちとともに、一瞬、眩いばかりの光が辺りを包む。
「今日のところはお預けだ。 もう少し時間がたったら相手してやるよ」
「負け惜しみか」
「フン、如何とでも言え」
光が収まるとともに、シグマの姿はその場から消えた。 どうやら、逃げたらしい。
「まあ、歯ごたえがねえ」
いや、両手足切られて歯ごたえがねえって、どういうことだよ。 普通、そんな戦闘の後って相手が手ごわいみたいなこと言うだろ?
でもまあ、コイツも普通とはいえないか……。
「あそ、何か疲れた」
「抱いて行ってやろうか?」
……。
「却下」
その提案が却下されたことに、多少ショックを受けたような顔止めて。 普通は却下するから。 いい年こいて抱っことか嫌だから。
意味深な視線に気づいたのか、
「……冗談だよ、冗談」
童子は笑って誤魔化す。
そこでやっと、クラウンは童子の違和感に気がついた。 能力者レベルが……分からない!
何故だ? 能力者の能力は一つしか持てないはず。 なのにこの男は複数の能力を扱った。 それだけでも十分変だが、能力を考えればありえないことではない。
しかし、能力者レベルが分からないとなると、相当おかしい。
「そういえばさ、君の能力は何なの? それと、レベルも分からない」
そのクラウンの問いに、童子は呆れたような視線を返し、
「俺の能力か? だから言ったろ、魔法使いだって。 それにアンデットは能力じゃない。 俺が勝手に死んだだけだ、体質って奴だよ。 それともう一個言うとだな、俺は悪魔憑きだ。 恐らく、その所為だろ。 じゃあ、早く本部へ戻るぞ。 鍵の掛かった扉を探せ、それで俺のアジトへ行く」