ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力者レベルゼロ Liars' feasts ( No.29 )
- 日時: 2011/04/08 11:20
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: MlJjY9/z)
数分後、廃ビルの中を探索し、鍵の付いた戸を一つだけ発見した。 だが、クラウンにとってはそれが非常に気まずい場所にあった。
その鍵の付いた戸は、男子トイレの一番奥。 なぜかそこの個室だけ完全に区切られ、鍵穴が付いた上で鍵が掛かり、いかにも怪しい雰囲気を放っていた。
「ねえ、これ以外じゃ駄目?」
「何言ってる、ここ以外に鍵の付いた戸は無かっただろ、これじゃないと駄目だ」
童子はクラウンの拒絶を無視し、ポケットから持つ部分にダイアルの付いた鍵を取り出すと、ダイアルを回し、鍵穴に差し込んだ。
ガチャリと言う音、そして、戸はひとりでに開く。
「え?」
クラウンの目に、有り得ない光景が広がった。 明らかに、どこかのオフィスなのだ。 そして、会議用の机があり、シェリーがそこの椅子に腰掛けている。
「クラウン、早かったね」
「え? うん、おかげさまで」
「テレポートダイアルを使って速攻で送ってきた。 さて、早く戸を閉めないと敵に感ずかれる、クラウン、早く戸をくぐれ」
クラウンは信じられない思いで、戸を通過した。 すると、さっきまで居た廃墟が、かき消され、白い扉へと姿を変えた。
「遅かったじゃねえか、ボス」
癖のある白髪の男が、碧い瞳とスペードマークの眼帯を向け童子に話しかける。
「悪かったな、クロア。 少しドア探しにてこずった」
「ふーん」
童子の答えには特に興味が内容に返し、クロアは次にクラウンの方へと目を向け、
「レベルゼロってお前か?」
クロアと呼ばれた男は席から立ち上がると、自らの肉体を黒い雷電に変え、一瞬のうちにクラウンの目の前へと飛び出した。
良く見れば、所々から黒い靄が立ち上っている。
「そうだよ」
「そうか! ボクはクロア、よろしくな!」
クロアは、クラウンの手をとると、痛いくらいの勢いでブンブンと上下に振った。 いや、訂正。 痛いくらいにではなく、実際に痛い。
「止めてくださいよ」
「ああ、ごめん」
どうやらこのクロアと言う奴は相当気が弱いらしい。 すぐに手を離してくれた。
「で、童子って言ったよね?」
「如何にも」
「君の言う悪魔憑きって、一体何なの?」
アジトについたとたん、今の今まで蓋をしていた疑問が一気にこみ上げてきた。 なんとしてもまず、悪魔憑きという奴のことを聞いておくべきだろう。 シグマも、確か悪魔憑きだった。
「う〜ん、なんていうかな。 悪魔と取引している依り代のことだ。 ちなみに俺の契約悪魔は大悪魔と名高いサタンだ。 悪魔憑きには階級があってな、最下級から最上級まで。 少なくとも、最下級であっても並みの能力者を凌駕する力が扱える。 それに、上級の悪魔であれば、下級悪魔の依り代となっている人間の能力を封じたり、命令したりが可能になる。 だから、俺がこの世で最強だと言ったはずだ。 悪魔の最上位はサタンだからな。 まあ、俺はそのサタンとの契約をフェネクスの助けを借りて何とかできた。 が、フェネクスはあくまで俺に可能性を提示してくれただけだ。 何時俺が力を失うか、死ぬか、サタン以外誰にも分からん。 まあ、やって見せてやるべきか」
童子は一瞬考え込むような姿勢をとると、その雰囲気が一瞬で変わった。 禍々しく、この世の邪念の元凶であるかのような嫌な感じ……。
少し、息苦しさも感じる。
それとともに、童子の姿も少しづつ代わり、長い黒髪に紅の瞳をギラツカせ、蝙蝠のような翼を持った姿へと変貌した。
「私が、この男の契約悪魔にして、魔王サタンだ」
声も少し低くなり邪念とは裏腹に少し神々しい感じがする。 不思議な感覚に見舞われる。
「この男からの説明要請か、私も暇ではないというのに……。 良く聞け、我々悪魔は地上ではその姿を実体にすることはまず出来ぬ故、我々は実体となるための依り代を得ることを先決とする。 そして、その人間との相性がよければ、地上で多大な力を発揮すると言うわけだ。 下級悪魔でも、依り代次第では上級悪魔にも勝る」
手の平で、サタンは青白い火の玉を弄ぶ。 それは次第に大きくなり、最初は野球ボール程度の大きさだったそれはバスケットボールほどの大きさへと成長した。
それを確認すると、サタンはその火の玉を消し、
「地上ではこの程度の魔術も、地獄の数倍の魔力を消費する。 故に、地上にあった肉体が、我々悪魔には必要なのだ。 そしてこの男との取引の内容は、言えぬ。 我々の間でのみの契約だ、部外者がある程度詳しく知ればその効力は解けてしまう。 私はこの肉体を、黒薙童子は私の力を手に入れるという条件での契約だが、これ以上詳しくは述べられないな」
それだけを言い終わると、元の童子の姿に戻った。 何故か、息が切れている。
「まあ、俺を見ても分かるように、だ。 悪魔憑きはデメリットも多い。 シグマのあの刃物もなしに俺の手足を切り落とした能力でも、使うだけで相当な体力消費……しばらくの間は安全だろう。 まずは、情報交換と行こうじゃないか」