ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力者レベルゼロ Liars' feasts ( No.30 )
- 日時: 2011/04/08 13:43
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: MlJjY9/z)
「それで、次。 このスクリーンに映っている女が、俺の悪魔憑きの手伝いをしたフェネクスで、アリスとかアリソンとか船長とも呼ばれていたな……。 彼女はフェネクス兼魔界のネクロマンサーとやらで、現世から魔界に人間を死者として召還する、降霊術師だの、死人使いだのと言われている。 次に映っているこの男が——」
童子は一度に物事を説明する。 大体、今17人目の童子の協力者にして、出会った場合に助けを求められる人物の説明を受けている所だ。 実際、こんなことをして何になるのだか疑問だが、ある程度聞いておくべき……だろうか?
「もう止めてくださいよ童子サン。 そんないっぺんに説明して理解できるのは貴方だけですよ、ボクにはさっぱりです、降参です」
クロアが音を上げた。 それを理由に、童子は今まで面倒くさそうにしていた説明を終え、
「質問は?」
五万と発生した疑問に対して質問があれば答えてやるぞ? と言う風に構えてくれた。
クロアから聞いた話、童子は人類始まって以来の天才らしいのだが、どうも放っておくと自分ペースで物事を進めることが多いと言う。 凄く癖のある天才だな……。
「このレジスタンスの資金源と情報源は? あと、武器の確保ルートと規模、それに能力者の数とどういう性質の能力者が居るの? 出来る限り、今の内に会って把握しておきたい。 最終的には国家が出てくると思うから、そのときのことも考えて出来る限り戦闘技術を与えないとね」
シェリーが無理難題を要求する。 それに、途中から質問じゃない……。
だが、その問いと意見に童子は笑をこらえながら、
「そうか、了解した。 戦闘訓練は全般委託しよう。 で、俺の部下どものリストは一個下の階の202号室に全てある、訓練の内容は任せる。 で、武器のルートだが、全て自社のものだ。 一応、表向きは兵器メーカーだからな。 ただ、殺傷力が薄過ぎて護身用程度にしか使えないような奴しか出荷した覚えは無い。 それと、資金源が」
この答えに、全員が驚くこととなった。 もちろん、この組織に居たクロアも、知らなかったレベルのことだ。
「俺のポケットマネーだ」
「えッ? ポケット……マネー?」
「ああ、自腹。 発明品の特許の数がそれなりにあるからな、俺の私財は放っておけば市場に出回っている金の4割を占める程度にはなるだろ。 あ、そうだ。 トレーニングルームは地下だ、エレベーターで9階と3階のボタンを同時押ししろ、地下のボタンは一切無い」
同時は自分の私財の大きさを、理解していない。 そして、ボタンの同時押しで地下へ行くと言う発想も、天才ならでわなのか、馬鹿ならでわなのか。 馬鹿と天才は紙一重とも言うし、恐らく童子は馬鹿よりの頭がいい人なんだろうな。
「じゃあ、ボクからも一個」
「ハイハイ、何でも聞いてくれたまえクラウン君」
一瞬、イラッとしたが、正直そこはスルー。
「悪魔憑きってさ、どうやってなるの?」
この質問は、想定外だったらしい。 童子は頭を抱え、考え込んでしまった。 だが、5秒も経たない内に、
「悪魔との契約だが、面倒だぞ?」
「構わないよ」
「そうか。 ……悪魔には何十種類も居てな、天界へ返り咲こうとしたり、地獄の主であるサタンを引き摺り下ろそうとしたりとさまざまだが、その中で、地上に出てくる目的を持った奴との契約が望ましい。 だが、悪魔憑きといっても、悪魔である定理は無いし、能力者でなくとも悪魔憑きにはなれる。 俺がいい例だ」
「能力者じゃん」
クラウンの答えに、童子は横に首を振る。
「俺の体質でアンデット。 で、魔法は能力とは別物で、更にそこに悪魔憑きで悪魔の力を上乗せしている。 俺の能力はどこにも無いし、魔法は能力ではない。 原理を理解すれば一般人でも使用可能だ。 で、そうだな、俺に憑いている悪魔が西方のサタンだと言うなら、後で3階へ行って見るといい。 研究室に東方の“鬼”の悪魔憑きが居るはずだ。 特に、悪魔で無くとも悪魔憑きと俺達は呼んでいる」
童子は能力を持っていない? それであの力か!
恐ろしいな、強い能力を一個持ったレベルⅤよりも、複数の能力を持っている時点で脅威だが、魔法と言う変幻自在の能力に、悪魔の力。 更には自分自身が生きた死人で童子のやった銀の剣の様に特定の攻撃でなければ死なないと言うことだ。
「じゃあ、悪魔の憑けかた、教えてよ。 レベルゼロじゃ、能力が無い。 だから、ボクは悪魔をつけるべきだろう?」
童子は呆れたように首を横に振る。 そして、
「止めておけ」
即答。 そして、それに反抗しようとするクラウンを、クロアが制した。
「ボクも、悪魔憑きには賛成しかねるよ」
「何で?」
「その理由は簡単だ、死ぬかもしれない。 そういう理由があるからだ」
童子は、険しい表情でクラウンにその重たいリスクを言い放った。