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Re: 能力者レベルゼロ  Liars' feasts ( No.45 )
日時: 2011/04/20 21:05
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: MlJjY9/z)

 「あ、そーうだ。 この世界、ボクの思い通りになるんだっけ? だったら、今ここで君たちを再起不能にしてあげる」

 立ち去ろうとするクロアは、振り返ったかと思うと、

 パチンッ

 と指を鳴らす。 すると、堕ち続けていた地面が固体化し、足場となる。 そして、周囲の景色も一変。 無数の死体が、所々に転がされ、そのどれもが例外なく苦痛に表情をゆがめている。

 「さあて、この精神世界。 夢の世界。 ボクの精神が多い割合で織り込まれている。 故に、今のボクがこの世界の支配者で、僕の思い通りになる世界。 万に一つも、君たちに勝ち目は無いよ。 まあ、現実以上に良く動けるかもしれないけどね」

 その構内に残った言葉を吐き出すと、自身に迫り来るクラウンを引き寄せ、寸前のところで空を掻く。 
 何が起きた?
 クラウンの体は軽々と空を舞い、吹き飛ばされる! 体が重い。 攻撃自体はたいしたことが無かった。しかし!
 何だ? この異常な量のダメージは! 

 「何を……したの?」

 「クラウン、加勢するよ!」

 「シェリーは来るな! 舞闘派能力じゃないでしょ!」

 「おお、健気だね〜。 数で押せば勝てると思っている辺りが特に……さ、ボクの世界でボクに勝てるわけが無いだろう? ちょっと君、眠っててもらえるかな?」

 その言葉とともに、クロアは再び指を鳴らす。 すると、シェリーはその場に糸が切れた人形のように倒れこんだ。

 「安心しなよクラウン。 殺しちゃ居ないさ、ただの白昼夢だ。 意識が飛んで自分の世界に閉じ込められただけだよ。 ボクの気が向けば、彼女は起こしてあげる。 それと、今君を気絶させなかったのはしたくなかったわけじゃない。 君にも大きく影響が出るように、この世界に織り込まれた君の精神の割合が多かったらしくてね。 どうやら、ボクには気絶させられないらしい。 まあ、彼女はよくて1割だったから気絶させられたけどある程度相手も混ぜ込んでやらないと、この世界で殺しても廃人みたいには——」

 クロアがゆっくりな挙動ではあるが、相当な速さでクラウンの目の前へと移動する!

 「ならないんだよね」

 その言葉とともに、クロアはクラウンの額を中指で小突く。 すると、さっきと全く同じだ! 体が勝手に空を舞い、吹き飛ばされる感覚! そして、地面にたたきつけられても、そのダメージは皆無。 しかし、体が更に重たくなる!
 何で、こんなダメージが? 何で、あの程度でこの量の……!

 「そうか、ようやく理解したよ」

 「そうかい、クラウン。 でも、多分ボクの方がこの世界では強いと思うよ?」

 その言葉とともに、クロアは再びゆっくりとした挙動で、素早くクラウンに近づき、額を小突く直前で——クラウンはその指を掴み、いとも易々とへし折る!
 だが、クロアは一切痛みを感じたようには見えない。 しかし、その指は折れている!

 「人間だったら、痛みを感じたかもしれないね。 ケド、生憎ボクは人間じゃない。 嘘吐きだから、痛くないよ?」

 そう言い放った直後、クラウンが今度はクロアに詰め寄る。 そして、その額を中指で軽く小突くと、今度はクロアの体が空を舞い、吹き飛ばされる!

 「思えば、簡単なことだったんだよ。 夢の中では全てが思いのままだ。 夢の中は精神世界だし、簡単な原理だったんだ。 想像力が、この世界では力を生む。 そうでしょ?」

 クラウンは、さっきまでの体の重さを「忘れ」、圧倒的な魔力をその身に纏う! だが、

 「ハハハハハハハハ! 全く持ってそのとおりだよ、ケドね。 ……君じゃボクには勝てない! 嘘(知恵)の方が、バケモノ(力)よりも強い!」

 その直後だった、

 「ちょっと失礼、表に出てきて……もらえないか?」

 聞き覚えのあるその声が、全てを現実へと引きずり出す! 周囲の景色はゆがみ、消えたと思うとさっきくぐった扉の下に、クラウンは立っていた。 その横に、シェリーは倒れこんでいる。

 「さて、俺達の救世主に色々やってくれた罪は重いぞ? 分かっているか、クロア」

 「童子君、まさかボクの世界に介入するなんて。 思ってもみなかったよ。 どうやったの? ボクの肉体も全て、あの世界に送り込んでたはずなのに」

 「簡単な話だ。 不死鳥の……助けを借りた」