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Re: 能力者レベルゼロ  Liars' feasts ( No.66 )
日時: 2011/04/30 09:16
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: MlJjY9/z)

 破けた天井の下、クラウンは童子が目覚めるのを待ち、彼の持つ鍵を使って襲撃を受けたのとは別のアジトへと飛んだ。
 クロアの目的。 ファファニールなる龍の目的。 この二つが今後の敵だ。 もはや、シグマがクロアに従っていると分かって居る。 故に、シグマの対策は戦闘対策のみ。 思考にまで手を伸ばすことは無い。

 「う〜ん、素晴らしく混沌としてきたな。 だが、俺はここまででリタイアしそうだ」

 医務室のベッドに横たわった童子が、朗らかに言い放つ。
 どういうことだ? リタイアって、戦わないと言うことか? いや、思考の戦いもリタイアする……と、言っているのか?

 「どういう……こと?」

 「どうもこうも、救世主殿。 俺の体は無茶な魔力を通電させてボロボロだ。 放っておけば後2日無くて死ぬだろ。 魔力の毒のことは知っているだろうし、これ以上何も言う事もない。 最後に、俺の馬鹿げた予知と言う名の推理でも聞いておけ」

 童子はポケットからタバコを一本取り出すと、くわえた。 火をつけ、吹かす。

 「さて、俺の常識で考えてみたんだが、俺の常識は普通とは全く違うからな……その辺は許してくれ。 で、そうそう。 クロアのことだ。 奴は恐らく、古式騎士を動かす鍵としてクラウン、お前を欲しがっている。 故に、殺されはしないが……半殺し程度は有るだろうな。 古式騎士は、古代の遺跡より出土した人型兵器だ。 何故知ってる? って顔してるな。 その理由は簡単だ。 俺がその文明の人間の子孫だからだ」

 今の文明は3つに分けられているのは知っているか? 特に気にされては居ないが、力の民、知の民、儀の民。 この三つは今の民族だ。 だが、俺は遥か昔に力の民によって滅ぼされた。 予の民と呼ばれる種類の人間の血が薄くでは有るが流れている。
 その民族は、古式騎士によって力の民を迎え撃ったが……力の民はそれを頭数で埋めたと聞いている。 結局は、滅ぼされて、俺のような末裔が時々居るが、誰もが予知するかのような脳を持っていない。
 予の民の由来は、その予知でもしているかのような洞察力と構成能力にある。
 クロアも、恐らくはその末裔だろう。 奴は、俺たちが攻め入る所を準備を整えて迎撃してきた。
 

 「次に……」

 童子はタバコを灰皿に押し付け、

 「ファファニールと呼ばれる龍の行動パターンだ。 龍という奴は、聖なる力を求める習性がある。 故に、適当な教会で待ち伏せれば鉢当たる。 だが、お前が言っていたレベルLが本当であれば奴には手を出すな。 殺されるぞ。 奴を殺す方法は、無い。 ただ、奴を止めるのなら……まずいな、思った以上に侵食されていたらしい。 俺はここでギブアップだ。 じゃあ、元気でやれよ」

 体がゆっくりと透けていく……?

 「有りえない現象だが、魔力を許容範囲以上使った奴に発言する透過現象だ。 俺はもう……消える。 一人にしていてくれ」

 それだけ言い残し、童子はクラウンをその部屋から追い出した。
 まだ、聞いていないことが多すぎる。 ファファニールの止め方は? 不死鳥の力って?
 何だ? 今聞かないと、永久に分からないままじゃないか! 

 「珍しいな、私を呼び出すとは。 で、どのような用件だ?」

 「後5日、……俺の体を騙してくれ。 どこまで出来るかわからない。 だが、あと5日で片をつける」

 「フン、面白い」

 閉じた扉の向こうから、誰かと童子の会話が漏れ出す。