ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力者レベルゼロ Liars' feasts ( No.71 )
- 日時: 2011/05/04 13:01
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: MlJjY9/z)
「透過現象が始まっているな、この様子だと——」
「俺の寿命は長くて二日だ。 だが、せめてそれにプラス三日欲しい」
童子は、目の前の黒髪の男に事情を述べる。
彼は、童子に憑いている悪魔。 フェネクスとは別のもう一人。
地獄の王、魔王などの異名を持つ、悪魔のトップに立つ。 魔王サタン。 それが彼の今の呼び名だ。
「三日程度で良いのか? 私の魔術を使えばその透過現象を再び抑えることも可能だが……? 生きたくないとでも言うのか」
サタンは静かに童子に言い放つ。 その言葉は、一言一言が威厳に満ち、ただの会話とは思えぬほど重い。
「全く持ってそのとおりだ。 俺が死んだらクラウンに憑いてくれ、あいつは悪魔憑きの器としても資質がある」
「自ら死を選ぶ……と?」
「ああ、後は目的を達成するだけだ。 俺は永く生き過ぎた」
童子の言葉に、サタンは苦笑する。
その視線は、愚かな人間を眺めている。
「貴様も、フェネクスと同じ事を言うのか。 永く……私よりは明らかに短いであろう? それでも……5日だけ伸ばせばいいのだな?」
「ああ」
童子が、サタンの問いを、承諾する。
「よろしい、貴様は地獄行きだ。 貴様の頭脳は……神にも劣らない。 故に、私は貴様のその頭脳がほしい。 最初の契約と、今の延命での契約。 確かに、承った」
サタンは特に透過を抑える何をするわけでもなく、
「今から……人間界の時間にして5日間。 120時間の間、貴様の命を繋いでやる。 その間は、体調不良も怪我も忘れ、存分に暴れまわるが良い」
それだけを言い残すと、その場から消えた。
扉の向こうから聞こえてくる声に不審がったクラウンが、サタンが消えた直後に病室の扉を開くと、そこに童子の姿は無い。
「もう……消えた? 嘘だ……」
いや、消えてない。 窓が開け放されている!
童子は……どこへ?