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—第一章　殺人日記—

　「…ここに…舞衣子がいるのね…」
　言葉こそは詩音に向けて言っていたが、
視線は、目の前の廃墟に向けられていた。
背後の草が不気味な音を立てて揺れ、風が脇を通り抜けて行った。
「そうだよ」
自分でもびっくりするほどの重みのある声が、夕方の空気を伝った。

　　　　　　　　　　　　　　　＊

　ギギギイイィィィィィィ
　廃墟の中にはいった。
木造建築ならではの、背筋のぞくぞくするような音。
ったく、木造建築うっざ!!
「舞衣子、舞衣子、舞衣子——？」
由香里が、どこまでも暗い部屋に向かって、叫んだ。
あんたに、見つけられるかな？
「…ちゃん…由香…里…ちゃん…？」
舞衣子の、か細い声が、聞こえる。
こりゃ、すぐ、見つかっちゃうな——
「…舞衣子!?もしかして、舞衣子なの!?」
由香里が、そこら辺をがさごそ嗅ぎまわり始めた。
舞衣子が居るのは、そこらのガラクタの中じゃないよ。