ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 椿原小学校探偵部【第2章】 ( No.4 )
- 日時: 2011/04/01 18:04
- 名前: 星都 ◆U9Gr/x.8rg (ID: p81XYxhw)
第1話
「ひっまだぁぁあああ!!!」
部室に入るなり暇を連呼するあやだった。毎度のことなので、先に来ていた親友の乙葉はそうねぇ、と適当に相づちをした。他の部員達もそれぞれ読書に没頭している。
誘拐事件から一ヶ月。夏休みに入っていた。一応探偵「部」なので、こうして学校に集まって暇な時間を共有しているのだが、本心としてはどうせ読書しかしないのだから、図書館に行きたい。しかし現在図書館は文芸部が何故か占拠している。
「ねぇねぇ、どうせ読書しかしないんだから集まらなくても良いじゃん」
部室に入ってきて30秒後に言う台詞とは思えない弱音をはく。それをいかにも優等生らしい秀二が溜息をついた。
「何を言っているんですか。だいたい、夏休みに入って5日たったのにまだ宿題に手をつけていない、あやを勉強させるために集まっていることを忘れたんですか」
「だ、だってぇ…」
そう、探偵部の5人がこうして部室に集まっているのは他でもない。期末テストに成績が悪かった絹岡あやの勉強を教えるために、こうして集まっているのだ。
本来小学校では期末テストなどはないのだが、椿原小学校は学力強化のために特別に行っているのだ。部長である大空かなたは5教科平均点 91点で、学年8位位。部員の春風乙葉は家が旅館で若女将にもかかわらず、5教科平均点84点とこれまた好成績で順位は15位。同じく山木秀二もエリートぶりを発揮して87点で学年11位と好成績。そして、探偵部の頭脳とも言われる一城愛香の成績は、問答無用で5教科平均点100点。もちろん1位。正直言って、本当に同い年なのかと疑うほどだ。そして、肝心の絹岡あやの成績は———。
「5教科平均42点。よくこの点数を親に見せられますね」
「しかも、50点でもなくて30点以下でもない。微妙な点数ですわ」
「ひ、ひどいよ二人とも!私だって頑張った結果がこれなんだもん!!」
妙に大人っぽい同級生二人に溜息をつかれると、あやは両手をぶんぶんと振り回して抗議をした。
「はいはい、とにかくあやに宿題を教えてくれって先生にも頼まれたんだ」
「どうせ大塚でしょ!あの先生はおせっかいすぎなの!」
「先生を呼び捨てにするなよ…」
かなたが黒板に国語の問題を書きながら言う。おそらく授業風に教えようとしているのだろうか。形から入るタイプのかなたは、だてメガネまでしている。
そして、ただ一人涼しい顔をして読書をしているのは愛香だった。
「愛香、お前も何か言ってやれよ」
「やだ」
「……即答かよ」
真夏で今日は30度を超えるというのに、愛香は汗1つかいていない。
涼しい顔で本を読みふけっている。どこかに扇風機でも隠しているのだろかと、かなたは本気で思ってしまう。ふと、愛香が思い出したように席を立った。
「えーと、次の問題は……って愛香?」
「愛香、トイレですか?」
「違う。教室」
「教室?」
つまらなそうにしていたあやが反応する。どうやらどんな手でも良いから、このおせっかいな同級生達をふりほどきたいようだ。
「ん。勉強の約束してるから」
「や、約束!?誰と?!」
「誰って…相嶋と」
その瞬間、探偵部の時が止まった。あれほどけたたましく鳴いていた蝉も、今は止んでいる。そして再び蝉が鳴き出したとき—————
「「「「えぇぇぇぇえええ!!!!????」」」」
蝉よりもけたたましい4人の叫び声が響き渡った。