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Re: 化物狂詩曲-バケモノラプソディ- ( No.22 )
日時: 2011/04/28 22:51
名前: 緑紫 (ID: rb3ZQ5pX)
参照: そういえば私、受験生なんだったww←

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「あっれれー?? お兄さん。なぁーにこんな道端でお昼寝してんのー? 風邪引いちゃいますよ?」
 目を覚ましたところは、人通りの少ない俺があのゾンビ野郎にこてんぱんにされた場所だった。少女が心配そうではなく、面白そうに俺を上から眺めている。なんだか厨二っぽい感じの子だ。特徴的な縦ロールに、きっとカラコンであろう青い瞳。
「………問題児…じゃなくて、穴浜夏音?」
 穴浜夏音。
 穴浜家に住む兄穴浜夏季の双子の妹で、百合っ子(らしい)。好奇心旺盛で、明るくポジティブな中学2年生。
 …だったはずだ。
「そーですそーです大正解!! そんなお兄さんには夏音からの愛のキスを——あげないっ!!」

 いや、別に中学生、たかが中学生のキスなんざ欲しくもねーし。てかいらないし。

「だって夏音、男には興味無いもん」

 ……出た。
 問題発言。
「夏音が大好きなのはぁ……お・ん・な・の・こ!!
 オーケー? 女の子だよ、女の子っ!!」
「何で3回も言うんだよ」
「なんとなーく」
 ニコニコ…というよりニヤニヤと笑って彼女は倒れて血まみれの俺の隣に座った。
「それよりお兄さん。痛そうだけど、それはもしかして演技なの? 血糊だったりすんのかな? カッコいいねーお兄さんっ!! 凄い凄い! 血糊って一体何処で買えるの? 夏音も血糊使って腕とかめっちゃ真っ赤に染めたいんだけど「勝手に話進めてんじゃねーよ」
 ていうかお前は厨二病か。血糊って…相当末期な奴がやるモンじゃないのか? まぁでも考えてみれば、こいつ髪の毛銀髪だしな。ありえないことはないだろ。
「お兄さんとお話するのは楽しいなぁ。でももうお終い。これ以上夏音がお兄さんとお話すると、後で夏音痛い目見るからさ」
「それは…お前の兄貴の——「そう。夏季だよ。よく知ってるねお兄さん」
 そんぐらい知ってるさ。
 言っていいのかわかんないけど、穴浜夏季は夏音より相当ヤバい噂が流れている。
 なんでも妹(夏音)を拉致監禁しているとか、手錠と首輪で縛って犬小屋に縛り付けていたとか。そして自分以外の異性と話たりしたら、ナイフを身体に突き付けてるとか——。

 …否。
 今俺はこの目で確認した。それは噂じゃない。実話だ。
「なぁ、穴浜。答えたくなかったら答えなくていいんだけど——訊いていいか?」
 彼女は何も答えなかったが、静かに頷いた。
「その足首から脹脛(ふくらはぎ)にかけて所々付いてる傷さ…」
 そこで、俺は言葉を発することを終了した。
 いや。終了させられた、のほうが正しいだろう。

「夏音夏音夏音なつねなつねなつねなつねっ。何でぼくが会いたいと思うたんびにお前は何処かに行くの? そんなにぼくが嫌い? 他の男と楽しそうに話してさぁっ!」
 奴——穴浜夏季が突如、俺らの目の前に現れたからだ。